■エンジンを,生かすも殺すもキャブしだい カートをベストな状態で走らせるにはシャーシはもちろんですが、 エンジンのパフォーマンスをベストな状態にもっていく必要があります。 その中でも重要なのがキャブレターのセッティングです。 エンジン自体に何も問題が無くても、キャブレターのセッティングしだいで最大パワーを60%にも100%にもす ることができます。 特に、カートで使われるフロートの無いキャブレターを使う場合、いろんな面でシビアなセッティングが要求され ます。 通常、カートのキャブレターにはLOニードルとHIニードルとの2つのニードルで燃調をしていきます。(上級タイプ には3ニードルがあります) LOニードルは全域(低速から高速)での燃料供給を受け持ち、HIニードルは高速域(スロットル半開以上)での 不足分を補っています。 あまり高回転しないエンジンならば,HIニードルは必要ないかもしれませんね。 一般的なカート(ミッション除く)は変速機を持たないため、 低速から高速までの幅広い回転域をカバーしなくてはなりませんので高回転時にLOニードルだけでは燃料供 給が間に合わなくなります。 この不足分をカバーしているのが、HIニードルだということが言えます。 KTなどに使われるウオルボロキャブレターでは、ショップやチームにもよりますが、 大体LO1:10〜1:30 HI:15〜:30 くらいでセッティングしているようです。 この単位(数値)ですが、ニードル調整の時のニードル開度を示す表現として時計の長針の位置の状態に見立 てて言い表されます。 たとえば1:10 これは1時間10分と読みます。 同じ状態で :70(70分)と表される場合もあります。 ニードルを一旦全閉にした状態から開けるニードルの回転数として、時計の長針が1時間と言うことは360度 (1回転)まわした状態です。あとの10分は長針が10分の位置です。 ■では、実践編です 各ニードル開度は標準値(多少濃い目)に合わせてからコースインします。 @最初に、LOから合わせていきます。 コースの最もスピードが落ちるコーナーで、立ち上がり加速した時に気持ちよく吹き上がっていくかを確認しま す。 ぐずつきながら吹き上がる場合は濃いですので、LOニードルを閉じていきます。 逆に、息をつくように吹けるときは薄いですので開けていきます。 気持ちよく立ち上がっていけるようになったら、そこから気持ち開けてとりあえず完了です。 A次にHIを合わせます。 ストレートの最終の一番エンジン回転が上がるところで気持ちよく回っていくか確認します 「ぶりぶり」言って回転の上昇が重いようなら濃いので閉じます。 HIは必ず濃い状態から合わせていきましょう。薄いと焼きついてしまいます。 BHIが決まったら、最後にもう一度LOを調整して完了です。 ※LOニードルはマイナスドライバーで調整するようになっており、走行中にさわることができません。 ですので、ある程度の基準開度で数周走り、不具合があった場合はピットインして、再調整する必要がありま す。 しかし、いちいちピットへ戻って・・・と言うのも面倒な話です。 そこで、便利なアイテムとして走行中でもLOニードルを触れるものがあります。 (フレックスTニードル)これを使えば走行中でも簡単にセットを出すことができます。 但し、これはレースでは使用が認められていません。 あくまで練習時のニードル調整用として使ってください。 ※HIニードルは走行しながら調整する(触る)わけですが、高速走行中ですので手元を見ながらっていうのは 無理ですし危険です。 これの練習には、カート停止状態でシートに座って実際に走行中をイメージしてニードルを触ってみます。(手元 を見ないでやるのでブラインドタッチとでも言いましょうか) 慣れないと5分まわしたつもりでも実際は10分まわっていたり、ほとんどまわっていなかったりしますのでしっ かり感覚に慣れておきましょう。 また、調整後の変化にも感覚を研ぎ澄ましておかなくてはなりません。 HIニードルにあっては、10分もまわすとかなりフィーリングが変わってくるはずです。 この変化に気づかず、まだ絞れるな・・・と思い絞った結果、焼きつきなんてこともありますので慎重にいきましょ う。 ニードルの開度変化にエンジンが反応しない、または鈍い時は、プラグの劣化が考えられます。 一度でもかぶらせたプラグは、実質、熱価が下がった状態になっています。 このようなプラグを使ってセッティングを出そうと思っても思うように行かないのが実情です。 しっかりセッティングを出したいのならコンディションの良いプラグを使いましょう。 キャブセッティングと言うか、キャブ自体の話ですが、内部パーツのレバーやスプリングの状態によってもニード ル開度が変わります。これらの調整にはキャブテスターと言うものを使います。 【重要】ニードル調整の注意点として LO、HI共に一度に多く回転させないようにしてください。 多く回してもLOで10分程度です。HIは必ず5分づつ回すようにしてください。 ※ニードル開度はオーバーホール時の状態、(ピストンクリアランスなど)によっても変わってきます。 オーバーホールをされたときには必ずショップ、チューナーにニードル開度を聞いておきましょう。 ■おまけ その1 吸入関係で無視できないのはノイズボックスです。 形状、容量、などによってエンジンとのマッチングが変わってくるようです。 もちろんニードル開度なんかも変わってきますね。 パーツメーカー数社からいろいろ出ていますので試してみるのも面白いかもしれません。 昔はノイズボックスは取り付け義務がなくキャブからじかに空気を吸わせていたようです。 しかし、その吸入音は以外に大きくて排気音をも上回ることもあるくらいです。 吸気音対策以外でも、前輪から跳ね上げられた砂や小石などがエンジンに入ることを思えばノイズボックスは あったほうがよいでしょうね。 まぁ、それでも異物を吸い込んでシリンダーに傷が入ったりしますけどね。 その2 ノイズボックス取り付けのフランジも種類があって、スムーズに吸気が流れるようにファンネル状になっていま すが、そのテーパー加減などでエンジンのフィーリングが微妙に変わったりするそうです。 SSI社から3種類くらい出ています。 大まかなキャブセットの概要 キャブは気温、気圧、湿度などに非常に敏感で、環境に応じて細かいセッティングが必要になります。 朝と昼、夕方ではキャブセットが変わって当たり前なのです。それくらいシビアにセットできるように頑張りまし ょう。もっと言えば、燃料タンク内の燃料の残量によっても変わってきます。 また、オイルの銘柄、混合比が変るとこれまたセットが変ってきます。 いつも使うオイルや、混合比のデータはしっかり取って置くようにしましょう。
キャブレターにも若干ながら個体差があるようで、エンジンによっては相性のいいキャブとそうでないものがあ るようです。予算が許せば数個のキャブを試してみて、一番相性のいいキャブを使えればベストですね。 雨天時のキャブセッティング 雨天時は晴天時に比べて、走行スピードが低くなりますよね。 コーナーにおいてはエンジンの最低回転数も下がります。ですから、LOは若干絞り気味になると思います。 LOを絞れば当然HIも変わってきますね。 雨水の浸入を防ぐレインカバーの形状、容量によってもニードル開度は変ってきます。 |
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