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ノリントン/SWRによるマーラー交響曲第4番ト長調

マーラー交響曲第4番ト長調

マーラーの第4交響曲は、マーラー作品の中でも比較的小編成で演奏時間も短いことから、昔から親しまれてきた作品です。日本でも1929年に初演、翌1930年には録音まで行われています。ただ、最近はそれほど人気がないらしく、あまり生演奏を耳にする機会がありません。

どうやら人々は、単純で明朗に見えるこの曲の正体、 メールヒェンの中に隠された「本当は怖い」ところに気づきはじめたようだ。

作曲家◎人と作品 マーラー(村井 翔 著)

私が読んだ解説書のほとんどは、第4交響曲は各楽章がいずれも伝統的な形式に対するパロディで、作品全体がアイロニー(皮肉)に満ちた古典交響曲である、と書かれています。確かに、第1楽章の混乱としか言いようのない、はっきり言って滅茶苦茶な、展開部が突然消え、ふわっと第1主題が現れるあたりは、大袈裟に再現させたなとすぐにわかるし、その知識のおかげで、私も知性溢れる芸術理解者になった気分で苦笑することができました。

しかし、アイロニカルだといつまでも鼻で笑いながら聴いていては、もったいない、と最近考えるようになりました。たとえ、君たちがこれから聴くものは、すべて本当ではないよ。と言われても、その本当ではない世界に入って行き、(騙されたまま)旅をし続けても十分楽しめる作品だと思います。とても親しみやすく、愛らしいフレーズでいっぱいですから。

ノリントン/SWRによるマーラー交響曲第4番ト長調

ロジャー・ノリントン指揮、シュトゥットガルト放送交響楽団によるライブ録音CDを聴いていると、純粋に、この作品を愛さずにはいられません。

特に第3楽章。最初に現れる主題は、とても美しく胸が締付けられるくらい、いとおしくなりました。弦楽器からビブラートをなくした透明感のある響きは、シュトゥットガルト・サウンドと呼ばれ、ノリントン/SWRの特徴とされています。この主題はその透明感ある響きを強調させていると思います。

また、このCDのブックレットにはロジャー・ノリントン自身によるこの曲の解説があります。これがまた面白い。

解説といっても、楽典的な内容は皆無で、この曲に対するノリントン自身のイメージを、子供を主人公としたひとつの物語を語られているというものです。(それとも何らかの情報による裏付けのある標題なのかな?)

前述の第3楽章は、死の床についている子供の様子、その子に降りかかる出来事が語られています。クライマックスに差し掛かる突発と呼ばれている部分について、ノリントンの表現は、本当にこの物語を前提にしてマーラーが作曲したのでは?とさえ思えてきます。

そして彼の苦しみは再び始まる。 すばらしいパッセージで、彼はハイドン風のメヌエットによる自らの救済を耳にする(12:46)。 熱が上がり、彼は旋律の速度を二倍三倍にして奏で、そして14:46で疲れ切って倒れてしまう。もはや苦しみはなく、...(以下、省略)

ちなみに引用文中の数字はCDのトラックタイムです。

最近はもっぱら、研究者・評論家による解説を読み「ふむ、ふむ、なるほど、なるほど」などと、マーラーの交響曲を聴いていることが多い私は、自分の想像力の無さを痛感させられました。こんな想像力豊かにして聴けば、もっともっと音楽が楽しめるんだろうとも思いました。

参考資料

Posted at 2006-12-10