28 セントロの古本屋 今日、このあとでかくCOHABという住宅供給公社へ行った後に、セントロのPraça Tiradentesをとおったら、古本屋があることに気づいた。なんども通っている道なのに、気づいたのは本日が初めてだった。はいると堅い本がたくさ んおいてあって、なかなか立派な古本屋だったが、入り口には男性向けのPLAYBOY誌(ポルトガル語版)や、もっと過激な雑誌もたくさんならんでいた。 こういうのもあつかわないと商売をやっけいけないのは、日本の古本屋と同じようだ。さて、ブラジル文学のコーナーに、Machado de Assisの全集セットが、いくつかあった(写真左)。 最近、夏目漱石の『我が輩は猫である』がポルトガル語に翻訳されて、ブラジルで話題になっているが、その紹介記事がVEJA誌の2008年5月7日号に掲 載されていた(176頁~177頁)。翻訳された本のタイトルは、Eu Sou um Gatoで、直訳だ。それによると、Machado de Assisはブラジルの夏目漱石らしい。両者はほぼ同時代人で、漱石は1867年~1916年、Machado de Assisは1839~1908年である。両者とも、古い時代から新しい時代をむかえる激動の時代に、近代人とはなにか、ヨーロッパの思想・哲学を輸入し 自国にあうように消化する とはどういうことかについて、思索し、小説を書いた。いろいろ文体も、似ている点もあるらしい。 29 COHAB-CT クリチーバ市の住宅公社へいってきた。Batel区に本部がある。ネットで検索して、電話番号をたしかめて、先週いきなり電話して、本日のアポをとった。 間に知り合いがいないので、私はまったくの赤の他人である。応対は悪いかなと、あまりよい応対を期待していなかった。しかし、社長(diretor- presidente)をふくめて、5人も出てきてくださって、パワーポイントやビデオを駆使して、2時間にわたって、住宅政策を説明してくださった。不 思議なことであった。 わたしはブラジルの専門家とはいったが、住宅政策に詳しいとは説明していないし、JICAや日本のODAの評価ミッションにくわわっているとも、述べて いない。そういう風にいっておけば、つまり「えらそうにみえる」「重要人物にみえる」ように、肩書きや業績や中央官庁関係の仕事の経歴などを事前に十分に アピールしておけば、応対がよくなるケースがある。今回は何もいわなかった。横国大教授とはいったが、電話の受付者が記憶して、幹部にYokohama National Universityと伝えたとも、思えない。おそらく、「なんだか知らないが、日本人の研究者らしき人間がくるよ」という程度の情報しか、本日応対して くださった幹部には伝わっていなかったと思う。 私も私で、受付で、「誰にあいたいのですか」ときかれて、詰まってしまった。「え、あのー、忘れました。誰とアポとったんだっけ?最初に電話にでたの は、ジアーニという女性で、その人が誰か上司をよんで、その男性が、Bem-vindo(ようこそ)とおっしゃてまして、アポは14:00なので、来たん です。あの、わたし、今日誰とあうのかなあ。住宅政策を調べにきたんです。日本の研究者です。」 のんきなものだが、 受付の女性がにこにこして、中に入れてくれた。なんとかなった。とにかく、たいへんな厚遇を受けて、ありがたいことであった。 5人もでてこられたので、これはやばいと思い、専門知識を最初の5分で開陳した。「クリチーバの住宅政策はどんな状況ですか」といった漠然とした質問を すると、むこうもしらけるので、「1987年の国立住宅銀行の倒産後の90年代のCaixa Econômica Federalによる融資事業は、停滞してたとおもいますが、どうですか」と、具体的に聞くようにした。それへの回答は、「まったく、停滞していた。90 年代は住宅への投融資はほとんどなかった」とのことで、私の理解がただしかったことが確認できた。金利が年50%もあったので、貧困者向けの住宅ローンは 麻痺していたのである。過去15年間ほど、ブラジルの連邦レベルの住宅供給システムは、Promoradiaというのが少しある程度で、それも不十分で、 自治体が税金を投入して対応するしかないが、財政に余裕のある自治体はかぎられている」と書いてきた。それは、全くその通りだと、現場の方が同意してくだ さった。 ほかにも細部をいろいろ確認できたが、興味深いのは、ここはmutirão(集団自助建設)がないことだ。クリチーバでは、やっていない らしい。 来週月曜日の5月19日に、スラム街や、改善後のサイトなどに、案内してくださることになった。事前に写真をいろいろ拝見したが、クリチーバにこんなに たくさんファヴェーラ(貧民窟)があるとは、しらなかった。あるとはきいていたが、すさまじい。 --- 改善プロジェクトに参加するファヴェーラ住民は、8割はCPFというIDカードをもっているが、20%はないらしい。日本的にいえば、まずしくて住民票 もないような、そういう人たちがいる。どうやってプロジェクトに参加させるのか、きいてみたところ、Bolsa Famíliaの登録記録をつかうらしい。なるほど!それで、本人確認をするらしい。あるいはそれもない場合は、とにかく、何らかのID カードらしきものをもっているので、 それでもってよしとするらしい。 詳細は論文などに書く予定なので、ここでの披露は控えたい。写真は、COHAB-CTの本部の概観。 --- ところで、こんど日本人移民100周年の記念碑ができて、そこで大きな改善プロジェクトが進められている。日本のODAは入っているのかと聞いたが、な いという。そういえば、ブラジルは援助をもらうことを嫌う傾向があることを思い出したので、そう伝えた。以前JICAのミッションで日本とブラジルの ODA活動の評価報告書をかいたときに、そういう傾向があることをしった。たとえばJBICの円借款も環境案件が中心になるというように、限られている (本日現在の状況は確認していないが、そういう時期もあったという意味)。しかしCOHABは、「え?とんでもない。ケレモス、ケレモス(ほしい) (笑)」と、おっしゃっていた。 社長さんのコメントは、私の耳には、「何をいうてはりまんねん、無償援助でもなんでも、いりまんがな」というような、大阪弁に聞こえた。とにかく、ブラ ジルで一番貧しい地区を扱っている機関であり、金利は0%から3%の範囲で、20年くらいの返済期間で住宅ローンを提供して、最底辺の貧困者の生活の質の 改善をはかっている。予算がたりないらしい。FGTSの個人向け融資とSFHの個人向け融資もあるが、それは月収1800レアル以上あるような中層階層向 けらしい。時間がないので、FGTS、SFHの説明は、省略します。ブラジル関係の事典などをご覧ください。 30 クリチーバ市における「参加型予算」 クリチーバ市は、実は「参加型予算」をしていない。今度初めて、2009年予算について、「参加型予算」をするらしい。ただし、名称は、ここにかいてあ るように、「市民予算」という。これはバスにはってあった、参加を呼びかけるポスター。本日、5月13日火曜日の、午前に集会があったようだが、わたしは いけなかった。このまえ、PPS(Partido Popular Socialista)のクリチバ支部の幹部会議にださせていただいたときに、政党としてクリチバ市の「市民予算」にどうかかわるかが、議論されていた が、わりと冷静な議論であった。別に予算にだけ参加するのではなく、あらゆることに有権者、納税者がよりよく参加する道を模索すべきだというような議論で あった。 31 「24時間通り」 Jaime Lerner 市長のときに導入された「24時間通り」は、現在改装中です。お店はまったく、ありません。これができたときは画期的で、街ににぎわうことに貢献したのだ が、現在は豪華なショッピングセンターがあちこちにできているので、いまさら若い人はここに来ないかもしれない。1つの時代がおわったような気がするが、 新たな装いでたくさんの若い人が集まる場所になるのかもしれない。民間活力は否定 しないが、公的機関による街の活性化の努力も応援したい。「24時間通り」は自治体のイニシャティブによる都心活性化策であった。同じパターンの繰り返し でいいとは思われないが、発想は高く評価されてよいと思う。 |