学部ゼミ生からこの日記をおもしろく読んでいるとの連絡があった。教
材の面もあるので、勉強に活用していただきたい。むろん教材にしては、あまりにも未整理であるが、いずれ内容別にいくつかの章にわけて再整理して、1つの
PDFファイルにまとめてしまおうと、おもっている。論文や教科書ではないので、本来挿入すべき具体的数値がはいっていない文章がおおいことを、ご了解い
ただきたい。細部を詰めていると、こんなに早くは掲載できない。「みてきたことをすぐ載せる」という発想で書いているので、その分クオリティは低くなりま
す。 別途、参考書、資料、取材メモなどをみながら、丁寧にかいたノートがあるにはあるが、その掲載は控えさせていただきたい。 36 Tijucas do Sul市という、小さな町 ★Photos from the municipality of Tijucas do Sul, the State of Paraná, taken by KeiichiYamazaki on May 15th of 2008 上の左から順に、①町(市街地)の空中撮影写真、②③私立公園の見応えのある大迫力の滝、④ある農家の畑、⑤市役所前の広場、⑥同じく広場に ある教会、⑦同じく広場にあるレストラン(この町唯一のレストランと思われる)。 クリチーバ市(ないしクリチバ市)を中心に、26の市町村かなるRMC(Região Metropolitana de Curitiba)という地域がある。クリチバ大都市圏という、法律で制定された地域である。とくにそれに対応した自治体があるわけではない。世界で最も 大きな大都市圏の1つである。そのなかに、Tijucas do Sulという、小さな農業の町がある。クリチーバ市から60kmほど離れている。市内のグアラルペ・バス・ターミナルから1日数本、バスがでている。片道 約9レアルだった。9時発のバスにのって、現地到着がちょうど10時半だった。行ったのは、2008年5月15日(木曜日)。 Tijucas do Sulの市役所の行政企画局長(Secretário de Administração e Planejamento)と事前にアポをとっていた。間に知人は介してない。ネットで電話番号を検索して、直接電話して、OKをとった。20年くらい前 は、ブラジルはアミーゴ(友達)社会だから、友達の仲介でアポをとっていくのがいいと、先輩研究者から聞いた覚えもある。最近は、時代がかわったのか、ビ ジネスライクになっていて、紹介者なしでいきなり電話しても、かつ別にえらそうな肩書きや職歴をならべなくても、地方自治体の幹部があってくださいます。 ただし地方自治体の方はと、限定付きの話である。 最初に、「日本のどこかの市町村と、partershipを結べないかなあ」とおっしゃった。ODAがほしいということかどうかはわからないが、そうい う国際交流への期待もあって、どこの馬の骨かもわからん日本人の私にこころよくアポのOKをくださったのかもしれない。1時間強の取材の内容は、そのよう な「ODA頂戴!」の話では全然無く、ブラジル地方財政制度の細部について、専門的に地方の現実の状況を、お話くださった。わたしの研究へのたいへんあり がたい協力をえることができた。 細部の紹介をかきはじめると論文みたくになってくるので、ひかえたいが、結論的には、驚いた。約13000~14000人の小さな町だが、そもそも何人 住民がいるかが、わからないという。BRICsといわれ、世界で注目され、かつそのなかでももっとも経済発展している州の1つのパラナ州の、そのまた最高 に発達した「クリチバ大都市圏」の中の、小さなムニシピオ(市町村にあたる基礎自治体の名称)で、住民数が確定できないのである。日本のような戸籍制度 や、住民票制度がないためもある。むろん、CPFというIDカードは、最貧層以外は、みなもっている。この町にかぎらず、クリチバ市でもそうだが、最貧層 にはCPFがない人がかなりいる。 IBGE(ブラジルの連邦の統計局)は、最新の人口センサス(それは2002年)にもとづいて、各ムニシピオの毎年の住民数の推計を発表する。それによ ると、Tijucas do Sulの2007年の住民数は、13,765人である。それとは別に、2007年にcontagem populacionalというが、実施調査がおこなわれた。しかし人口センサスほど徹底した調査ではなく、IBGEの調査員が各住宅をまわるが、いなけ ればそのままいないと書いて終わってしまうような、調査らしい。本当にそこまでいい加減なのかはわからないが、局長はそうおっしゃった。IBGEの予算制 約もあるだろうし、たしかにセンサスほど徹底した調査ができないことは、十分に理解できる。そのcontagemによると、同ムニシピオの住民数は 2007年で13,091人だという。これ以外に、SUSという健康保健制度(国民皆保険)があり、それに登録された人が約12800人いるらしい。 SUSは金持ちは加入しない場合もあるので、登録者は住民の8割ぐらいだとしてみよう。12800を0.8でわると、16000位の数値がでてくる。本当 の住民数は、15000ぐらいではないかと思われると、局長はおっしゃった。 ブラジルの地方財政における地方交付金の額は、住民数に直結してきめられるので、住民数をどう認定するかは、大変重要な問題である。 Tijucas do Sul市の弱点を披露しているのではなく、行政の一面を紹介した。たいへん優秀な局長さんで、ほかの職員の勤務のようすも拝見したが、職員の質は高い様に 感じた。局長は、しかし公務員の質の向上が最大の課題だと、おっしゃった。 タクシーで少しだけ観光したが、「RMC:クリチバ大都市圏」とは思えない、田舎であった。のどかで、すばらしい滝がある。広くて斜めに岩をつたってな がれていく滝で、驚くべき贅沢な観光資源だ。個人の土地の内部にあり、私有の公園になっている。その所有者はごく最近、先月あたりに逝去されたと、昼食を とったレストランのマスターが教えてくれた。この町ではみんなが知り合いのようである。わたしは後日、再度この滝をみにいく。今度は家族で。 ムニシピオのHPも充実していて、いくつか町の活動を紹介した 写真が掲載されています。 URL→ http://www.pmtijucasdosul.com.br/ 37 サン・ジョセ・ドス・ピニャイス市に立ち寄る チジューカ・ド・スル市から、クリチバ市へ戻るバスにのったところ、わたしの情報把握が甘かったのだが、途中のサン・ジョセ・ドス・ピニャイスが終点の 路線だった。あと、もうちょっとでクリチーバ市だ。残念というか、実は、むしろラッキーであった。ここは、自動車の多国籍企業が立地している町で、日産- ルノー、VW-アウディ、デトロイト・コーポレーションなどの会社が操業している。クリチーバの最寄りのアフォンソ・セナ飛行場もここにある。拙著『『リ オのビーチから経済学』でも簡単に紹介したが、実際にくるのは初めてである。予定にはなかったが、都合がいいので、少し町をみて、ついでにバス・ターミナ ルのすぐ近くにある市役所にも立ち寄った。完全なノーアポ訪問だったが、企画局にたちよって、資料をもらい、簡単に話をきいた。この町は、住民数が減るこ とで財政が悪化するということは、まったくないそうだ。頂戴した資料に財政データも若干はいっていたが、財政収入は州政府からのICMS交付金をふくめ て、増加中である。それは、十分理解できることで、今ブラジルは自動車が売れに売れている。その自動車工場の町なのだから、財政も「フローでは」豊かで当 然である。それが何に投資されているのか、投資内容に問題はないのかといった深い問題は、ノーアポ取材では立ち入れない。またの機会としたい。 近代的な都市かとおもいきや、意外に市の中心部は小さく、タクシーでざっとまわっても15分で終わってしまった。とくにみるべき観光資源はなく、小さな オフィスや住宅が並ぶ、あまり特徴のない市街であるが、セントロの広場は、教会があり、にぎやかだ。しかし賑やかなのはそのあたりだけのようだ。市役所 は、古い邸宅をつかっているような感じで(実際のそうかどうかは、わからない)、近代的な鉄筋コンクリートのビルではない。たいへん感じのよい市庁舎であ る。世界の自動車多国籍企業が立地する産業都市という言葉からは想像できない、メルヘンな雰囲気の役所だった。全体に、歴史の町とまでいうほど古くはな く、普通のオフィス・ビルもたくさんたっているが(高層ビルはほとんどないと思う)、かといって現代的大都市というわけではなく、教会のある広場を中心に まとまった小さな町という印象を受けた。 住民数は26万1125人(2006年の推計)、うち有権者は147,554人(2007年)。面積は946平方km。標高は200mから1250mと 起伏に富むが、平均で906m(同市役所企画・経済開発局作成の資料集 2008年2月版より)。 ★Ptohos of San José dos Pinhais, Paraná (taken by Keiichi Yamazaki on 15 of May of 2008) 左から、セントロの広場の民芸品店。ここで皮革製の安い財布を買った($R12)。次はそのセントロの教会。右の2枚は市役所の玄関と、はいって中にいく つかある建物の1つ。敷地は広いが、すべて低層の建物だ。 |