2008年ブラジル滞在日記 その19  by Keiichi YAMAZAKI
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63 クリチバ市のXaxim地区にある市立小学校訪問
   クリチバ市のAlto Boqueirão地区ないしXaxim地区にある「パラナヴァイ小学校」を訪問した。訪問日は6月27日。地方分権化の効果の調査であ る。わたしがすんでいるお寺のご住職が、外部講師として招聘されたので、つれていっていただいた。わたしの家庭のうごきの関係で、家族3人(家内+子ども +私)でついていった。子ども(4才)は10分くらいで授業に飽きたので(内容が理解できない)、わたしは教室から外へ連れ出して、運動場でほかの生徒と 遊ばせて、時間をつぶした。日本人がめずらしいのか、20人くらいの3年生くらいのこどもたちに、囲まれた。後日、うちの子は、「あのときは、ちょっとこ わかった」と感想をのべていた。校庭で、20ぐらいの子どもが地面にすわって、読書していた。先生が一人。その輪に呼ばれたので、はいっていったが、さす がにポルトガル語の絵本は読めないので、すぐ輪からはずれた。いずれにせよ、子どもどうしで、遊んでいた。言葉は通じていない。すべてにあきると、校庭の 椅子にすわっていた。
 わたしは、うちの子の相手をしつつ、教員、事務局長、給食づくりの担当者、警備員(ただし市立警察)をつかまえて、取材した。
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 児童数は約980人。午前のコース、午後のコース、夜間コースにわかれている。夜間は30名~50名とのことで、おもに成人だとのこと。教員は56名、 事務職員や清掃担当者が24名、あわせて80名の体制。事務局長(教員出身、女性)のお話では、市立小学校のほうが州立小学校よりも質がよいとのことで あった。給食は、Risotolândia Merenda社から派遣された職員が来て、つくっているが、パンないし甘いお菓子のようなパンと、ホット・ミルクである。lanche(ランシェ)とい う。つまりおやつである。給食という表現は、正確でないかもしれない。この会社が、クリチバ市内の小学校の給食のほとんどを配給しているらしい。独占市場 になっているようだが、教職員の給食を出す別の会社があるらしいし、児童向けのlancheについても完全な独占ではないようだ。門にずっと警備員がたっ ているが、guarda civilという、市の警察である。同じ人が、ずっとこの小学校を担当するらしい。
 分権化の効果としては、各小学校の裁量が増えたことだと、事務局長は述べた。以前は市当局のコントロールが強く、地区ごとの具体的なニーズに対応できな かった。地方分権化で、地域の具体的なニーズに対応できるようになったという。ブラジルは、同じ市でも、地区ごとの貧富の差がかなり異なる。パラナヴァイ 小学校の地域は、ややまずしい方らしい。具体的なニーズの例としては、パソコンの授業らしい。家にパソコンのない子どもがおおいので、学校でパソコン教育 をしているが、それが可能になったことは、分権化の効果だと述べられた。教材の内容や、教室の机、椅子の大きさなども、自由にきめられるようになったとい う。おそらく、外部講師に近隣の教会や寺院の牧師さん、神父さん、住職を招聘できるのも、分権化の効果であろう。特定の宗派に偏らないような、中立性の確 保が、重要となる。教科書については、MEC(ブラジルの教育文化省)の検定があり、検定をとおった本から、各学校が自由に選ぶ。日本の教科書検定で問題 になるような政治的イシュウはないと、おっしゃっていた。検定では、人種差別や宗教的偏向の有無がチェックされるのだと思うと、事務局長はおっしゃってい た。
 午前ないし午後の4時間で、十分な教育ができるのかということについてだが、「たしかに、8時間子どもをあずかれる学校が望ましいと思う」と、おっ しゃっていた。親をふくめた地域コミュニティからそういう要請がきている。ブラジル社会がそれを求めている。しかし、そうすると空間が2倍必要になる。物 理的に不可能らしい。8時間の小学校や中学校は、escola integralという。そこは、給食もある(lancheではなく)。中学校でも、午前で終わりだ。生徒の学力をつけるという点では、課題が大きいと思 われる(私見)。
 なお「コープ(協同組合)型小学校」について、きいてみたが、「サンパウロの例だとおもう。クリチバではないと思う」との回答だった。