2008年ブラジル滞在日記 その15  by Keiichi YAMAZAKI
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55  サンパウロへいく
    2008年6月12日(木曜日)の夜中に、夜行バスでクリチバをでて、サンパウロへむかった。家内と子どもを連れての家族旅行であった。19日(木)の早 朝に、同じく夜行バスで、クリチバへもどってきた(Cometa社のバス、片道約$R60.子どもも同じ料金)。帰りは、サンパウロ発が22:30、クリ チバ着が4:00だったので、5時間半の旅だった。あっという間であった。寝ている暇がなかったようにおもうが、家内の話だと途中一度ものすごく揺れて、 上の棚にのせていたわたしのPCが床におちてきたらしい。わたしはそれにまったく気づかなかったので、実際には寝ていたようだ。PCは、いま機能している ので、損傷はなかった。子どもは4才で小さいので、椅子が相対的に十分に広いわけで、熟睡したようだ。疲れがないようで、クリチバにもどってから、元気に はしゃいでいる。
 バスはLEITOという、ベッドに近い角度まで椅子が倒れる豪華バスがあるが(夜行のみ)、それだと片道一人$R90以上するので、もったいないのでや めた。
 サンパウロでは、(1)Transparência Brasilの本部と、(2)UNISOL-Brasilという「連帯経済」事業の本部を、訪問し、また(3)日本移民100周年記念事業に参加した。最 後のは、前半が日系宗教全宗派による合同法要で、開拓過程でなくなられたご先祖の霊を弔う儀式であった。後半や舞踊と太鼓ありの文化祭のような企画であっ た。サンパウロのバスのチエテ駅からタクシーで7分くらいの場所にある、会議場(Parrque Anhembi)で開催された。6月18日(水曜日)の午後から、はじまったが、わたしは午前中にSão Bernardo do Campoというサンパウロ市南部の別の市に、UNISOLの取材にいっていたので、結局儀式にはおくれてしまい、到着したときは最後の締めの挨拶がはじ まる前であった。佐々木師という、ブラジル日系宗教界の代表の方が、御法門ないし御説教ないし御法話として挨拶されていたが、内容は宗教色のないもので、 日系人の100年の努力をねぎらう内容であった。ブラジル社会に日系人がおおきな摩擦なく受け入れられた要素として、移民者が日本の高い農業技術の導入と 定着に努力したことを強調され、「土」を大切する魂がよかったと、話されていた。
56 Transparência Brasil
  わたしは日本のTransparency International Japanの設立理事の一人で、そのこともあってブラジルのTBには前からいきかったが、ようやく機会をつくれた。透明性のNGOであるので、彼らの活動 内容も、わたしがここでかかなくても、ポルトガル語、英語、スペイン語で、ネットで公開されている。財務も公開されている。しかし、少しだけ、記しておこ う。
(1)スタッフの陣容
 スタッフとしては、事務局に4人、プロジェクトに9人で、合計13人がほぼ常駐しているとのことだった。理論的な指導者ともいえるClaudio Abramo先生も階上におられれたが、ご挨拶はできなかった。
 プロジェクトは主要なのが2つあり、1つは5人体制(4人が研究・調査、1人がパソコンのプログラマー)、もう1つは4人体制(3人が研究・調査、一人 がパソコンのプログラマー)とのことであった。研究・調査担当は、弁護士、ジャーナリストなどの職の人らしい。事務局は、代表のAbramoさん、プロ ジェクト・コーディネイター、事務局長、その他の4人体制だとのこと。Abramoさんは、どこかほかの大学の先生かとおもったが、違い、TBに常駐し て、学術論文を書いたり、プロジェクトの仕事をしておられるようである。
(2)財源
 会員制になっており、会員をassociadosと呼んでいる。全国にいるそうだが、おもにサンパウロ州、ミナス・ジェライス州、リオ・デ・ジャネイロ 州の人が多いらしい。会員総会は年1回らしい。会計報告など議題は簡単な総会であるような口ぶりであった。会員には設立者も含まれる。TBの設立は 2000年である。
 具体的な調査プロジェクトの実施費用は、すべて財団などへ助成金申請をして得た資金で、まわしている。経済界と政府・地方自治体からは、寄付金・助成金 の類はないらしい。ビジネス界や政府から寄付金等を得るのは困難で、国内、海外の財団に申請するほかないとおっしゃっていた。とくに国連の民主化支援の ファンドに言及されていた。世銀資金は今は利用していないそうである。
(3)財源詳細(TBのネット・サイトより)
 たとえば2006年の会計は、以下に掲載されている。
 http://www.transparencia.org.br/docs/resumo2006.htm
 その内容を簡単に紹介すると、以下のとおりである。支出総額約$R545,000のうち(収入総額は$R680,054)、人件費 に6割弱を配分している。次が経常経費で23%、次が交通費・旅費で10%である。総額は、日本円で3,577万円(1ドル=105円、および1ドル=$ R1.6で、計算した)である。
 その財源は、収入の半分強の$R321,919が、自己財源にあたる「自由基金」fondo livreで、その内訳は、$R46,311が個人会員、$R16,440が法人会員である。このたび取材したプロジェクト・コーディネイターのFさん は、法人会員はいないような口ぶりであった。しかし2006年に関しては、ネットに開示されている会計情報によれば、法人会員もいたようである。寄付金が $R171,835である。またFord Foundation から$R86,083給付されている。
(4)活動内容
 いま重点をおいているプロジェクトの1つは、Excelêciasというもので、サイトは以下。
 http://www.excelencias.org.br/ 
 これは、ブラジルの州議会の議員や連邦議会の透明性を考えるプロジェクトである。州都にあたる大都市の市議会もおいおいフォローしていくようだ(一部す でに掲載済み)。経費もそうだが、議員の経歴(警察関係者か、教会関係者か、学校の所有者か、労働組合活動家かなど)も、各議会の総議員数に占める割合の 数値が計上されている。このプロジェクトの財源は、Fundo para a Democracia da Organização das Nações Unidas.(国連機構民主化ファンド)である。
 もう一つは、Deu no Jornalというもので、サイトは以下。http://www.deunojornal.org.br/ 
 汚職・腐敗に関する新聞雑誌の情報をクリップして、テーマごとに整理したもの。
(5) その他
 サンパウロ州政府がおこなっている基礎教育の学校における「財政教育」(反汚職教育)については、TBはかかわっていないと、Fさんはおっしゃってい た。
 TBは、公的部門の腐敗に焦点をあてており、CSRは扱っていないとのこと。また、もともと情報公開の運動と関係しており、リオ・デ・ジャネイロにある Article 19という運動と、連携しているそうである。
 IP(Integrity Pact)はほとんど重きを置いていないらしい。理由は、企業を相手にするのが難しいからだというようなことをおっしゃっていた。
 全体としては、公共部門の腐敗に絞り込んだ活動をしておられるようである。