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パラナ州アルミランテ・タマンダレ市の財政局長へのインタビュー 6月3日、午後14時に実施した。実際は財政局長は多忙で、無理で、別の方が丁寧に応対してくださった。Afornalli という方が対応してくださった。財政情報になので、取材メモはできているが、掲載は控えておきたい。数値のデータも重要だが、財政局で働く人たちの「顔」 から、行政水準がわかるような気がする。みなさん学歴もたかく(学歴が高ければいいとは限らないが)、経験もあり(30代中半以上にみえた),能力の高い 職員に思えた。 写真は左上から順に、 市役所前の市のメインストリート、市役所の表玄関、財政課職員、そして市全体の航空写真。 54 クリチバ市環境局清掃課(Departamento de Limpeza Pública)の取材 本日は、平成20年6月12日(木)だが、昨日の水曜日、クリチバ市の環境局の清掃課で、有名なゴミ回収のプログラムについてのお話をきくことができ た。Giseleさんといって、中村ひとし元クリチバ市環境局長と一緒に、長年ゴミ政策を担当されてこられた方(女性)に、取材できた。いつも「アポ無 し」でやっていると書いているが、これは事前にきちんとアポを申しこんだ。「アポを取る」は、ポルトガル語では、agendar um ecncontroとか、marcar um encontroなどと表現する。 日本の私大(東京)の院生や、わたしの横国の大学院の院生(マスター課程)も、同じ問題に取り組んでいる。前者は、わたしがクリチバにいるという情報を つかま れ、京都のある私大の教授を介して、Eメールで問い合わせがあった。後者は世銀の奨学金をもらって横国で留学しているスリランカ中央政府の環境行政担当官 であ る。スリランカのコロンボ市内の河川のゴミ投棄による汚染がすさまじい。なんとかしたいわけだが、それでゴミ行政を経済学の視点もいれて研究している。わ たしも関心があるテーマだし、わたしが指導教官であるスリランカ院生と、東京の私大の院生(未対面)の二人の院生への情報提供もできるので、「一石二鳥」 ならぬ 「一石三鳥」である。以下わかったことがらの一部を記したい。やや未整理だが、記載しておく。 取材先:Secretaria Municipal do Meio Ambiente(SMMA)、Departamento de Limpeza Pública、Gerência de Limpeza 場所は、SMMAの本部のある場所ではない。 1) 資源ゴミの分別収集(Programa : Separe o Lixo que não é Lixo) -89年10月開始 その月は179.32トン 11月413.88トン 12月452.02トン 89年 総計 1045.22トン -2000年 総計 13619.43トン 2007年 総計 12558.21トン 全年、すべて月ごとで、データがあるが、全面掲載は控えたい。 2 )上と、Cambio Verdeの合計 たとえば2007年合計は、15354.29 トン 3)Cambio Verdeだけだと、 2007年総計 2796.08トン 1999年 4358.04トン 過去の年総計の最高記録 4)organicのゴミの統計(Compra do Lixoのほう)は、すぐでてこず、もらってません。 ここで頭を整理しておきたい。家庭ゴミについての話で、事業系は別である。クリチバでは、資源ゴミはきまった日に(地区により異なる)、専用の資源ゴミ 回収者がまわっ てきて、集めます。自治体の専用車で、たくさんあります。それが政策の幹である。しかしそれ以外に、住民が収集ポストにもっていくと、食料(卵やバナナや リンゴなど) とかえてくれるプログラムがあり、それを「緑の交換」Cambio Verdeと呼びます。これはまずしい地区が対象ですが、全市に88の収集ポイントがあります。さらに、再資源化できない有機ゴミlixo orgânicoがあり、それも食料と交換してくれます。そのプログラムは、Compra do Lixoといいます(ゴミ買い取り計画)。さて、ここまで書いてきたことの外に、catadoresや、carrinheirosとよばれる、ゴミの収集 者がおられます。荷車をひいて、あつめてまわっておられます。この人たちも、一部はすでに、市に登録されています(クリチバでは)。99年時点のデータで は、3000人弱が登録されてます(cadastrados)。低所得の不安定就業者であります。その人たちは、通常、集めた資源ゴミを民間のリサイクル 業者に売ります。いま、クリチバ市は彼らの資源ゴミを受け入れる収集所を25カ所建設予 定です。そのうち2つが完成しています。とくに1つは、本日【平成20年6月12日(木)】が開所式で、市長もこられるそうです。わたしもこれから、参列 してき ます。年内に4つ、つくり、今後5年間で25つくるそうです。 これ以外に、Cambio Verdeと、分別トラックが収集したゴミの、分別センターが、クリチバ市の北に隣接するカンポ・マルゴ市に整備されています。今のところ分別センターは そこだけで す。最終処分場は1つだけ埋立処分地があります。そこは、クリチバ市以外の都市のゴミも受け入れています。その処分地の寿命をのばすためにも、ゴミのリサ イクルは重要な政策です。 5)Compra do Lixoのほうは、毎月16000人くらいの人が参加して、40トン分(月あたり)の食料と交換する。もってくるのは、有機ゴミ。参加される住民は、ほと んどが普通の 住民(業者ではない)。Cambio Verdeのほうは、7500人くらいが毎月参加して、250トン(月)集まる。それを65トン分(月あたり)の食料と交換する。Cambio Verdeについては、参加者は一般家庭の人もいるが、参加者にはゴミ収集業者もまじっているとのこと。いわゆるcatadores あるいはカヒニェイロス(carrinheiros)の人で、政府文書類では、coletores de material reciclável (再資源化できる物質の収集業者)とも、かかれている。荷車をひいて、そこにゴミのせて、そのゴミの間に4歳児くらいの女の子をのせて引いて歩いているお 母さ んを、先日、アルミランテ・タマンダレ市で見かけました。クリチバ市内でも、あちこちでみかけます。 その人たちは、あつめた資源ゴミのうち、売れるものは、市場に売ります。民間の収集所、depositoにもっていくのです。そこに流せな い 価値の低い資源ゴミを、このCambio Verdeのプログラムにもっていって、食料にかえてもらうそうです。だから、cambio verdeの参加者は、一般住民だけでなく資源ゴミ収集業の人もおられるようです。 6)この食料(バナナとか、リンゴとか、卵とか)との交換にかかる予算は、Cambio Verde と、Compra do Lixoの両方で、月7万レアルだそうです。 7)市は、かいとった(食料と交換した)有機ゴミは、ゴミとして処理 しますが、Cambio Verdeとか、資源ゴミ収集車で集めたゴミ(O Lixo Que Não é Lixo プログラムのほうの収集物)は、分別工場へもっていきます。それは 1つだけあり、クリチバ市の北に隣接するCampo Margo市にあります。そこは、二週間後に見学する予定です。手作業で、分別します。そして、民間のリサイクル過程へと投入するわけです。 8)以上のプログラム以外に、Olho d'Aguaという、河川へのゴミ投棄を減らすプログラムがあります。これは、小学校もまきこんだ、教育事業です。説明書 もらいました。これは、わたしの院生(スリランカ政府職員)に、とくに有用と思います。 55 カジュル地区に新しく建設された、ゴミ収集業者の会のための分別 センター (1)開所式 平成20年6月12日(木)、朝10時半から、開所式があったので、いってきました。市の環境局長もきておられて、お話ができた。数週間にあった COHAB(市の住宅供給公社)の社長もこられていた。市長(Beto Richaさん)については、奥様が代理で挨拶をされた。以下が写真である。真ん中は、圧縮機。簡単な会議室と台所も設置されている。トイレもある。 「ながく社会的に排除(exclusão social)されてきたcatadoresの人たちをこうしたセンターを通じて社会に統合(inclusão social)できることは、大変よかった」という趣旨の賛辞と祝辞が続いた。市議会議員もおられて、あいさつしながら、涙ぐんでおられたかにみえた。 Associasão de Catadores(ゴミ収集業者の会)の代表の方も、感激されているようであった。「みなさんは、クリチバをきれいにしてくださっている環境保護官で す。みなさんの長年の努力にむくいるために、これをつくりました」というご挨拶もあった。セレモニーは、型どおりの儀式におわることがおおいが、本日のセ レモニーはかなりemotionalな式だった。まことに形容しにくい雰囲気だったが、希有な式典を経験できたと思う。 さて施設名ないしプロジェクト名は、Eco Cidadãoといい、また、Parque de Recepção de Recicláveis Cajuru ともいう。「カジュル資源ゴミ受け入れ公園」だが、みてのとおり公園ではなく、工場である。年内に4つ、5年内に25を建設する予定だそう である(クリチバ市内)。 (2)収集量 クリチバで収集される資源ゴミの90%は、catadoresの人たちがあつめており、市の収集車は10%にすぎない。少し、計算しておこう。零細なゴ ミ収集業者つまりcatadores/carrinheirosは5000人から6000人だろうと、Giseleさんは推計されてます。もっと多いとの 説を、彼女は否定してました。99年の調査の統計では、2769人のcarrinheirosが登録されてます。彼らが1日に集める資源ゴミは、一人あた り135キロだと、推計されてます。135キロ×2769人だと、1 日あたり373815kgつまり374トン。1ヶ月だと11,214,450kgだから、11、214トン。年間で約13万トン程度。ちなみに、市が収集 車で公式に集める資源ゴミの量は、98年がピークで年間17504トン、最近では2007年が12558トン。catadoresの集める資源ゴミの分量 の10分の1である。いいかえれば、今日も式典で環境局長がおっしゃていたが、資源ゴミの9割は、catadoresの人たちが集めているのである。 (3)施設のメリット catadoresの人たちは、集めたゴミをそのまま、民間のリサイクル業者ないし仲介人にもっていくのですが、分別しないでもっていくので、質がひく いとみなされ、安く買いたたかれています。そこで、この施設で分別して、それから市場へ出すわけです。すると同じ資源ゴミが、5倍の値段で売れるようで す。この施設は、catadoresの人たちの貧困解消に、おおきな意義があります。今後、さらにcatadoresの人のassociationをつく り、最終的には25の施設を完成させ、ネットワーク化するそうです。 この施設ができると、従来の仲介人の仕事が減る可能性があり、そこは気になる点です。 (4)この事業には、Fundação Avinaという、スイス系のNGOがかかわっています。Avinaは、ラテンアメリカに22の支所があり、ブラジル国内に6つの支所があります。そのブ ラジル代表の方がこられていたので、お話をうかがうことができました。Avinaは、ラテンアメリカ全体で150名のスタッフをかかえています。ゴミ問題 だけでなく、森林保護、社会政策も担当しているそうです。 http://www.avina.net が、サイトです。 全国的にcatadoresの運動組織があり、そのサイトは以下です。 http://www.movimentodoscatadores.org.br つまりこうした事業は、クリチバだけでなく、全国的な流れの1つの可能性があります。また調べてみたいと思います。 |