2008年ブラジル滞在日記 その12  by Keiichi YAMAZAKI
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  ■一部修正および加筆があります(赤字)――平成20年6月11日 (水)

46  リオ・グランデ・ド・スル州の州都ポルト・アレグレ市の環境局訪問(5月29日)
  
環境局の固形廃棄物の担当者に取材した。1時間にわたってお話をしていただいた。ブラジルでは、クリチバとポ ルトアレ グレが、全国にさきがけて1989年~90年に、分別収集をはじめたようだ。ただし2つの市の方法は異なる。クリチバ市では、ゴミと食料スタンプとの交換 プログ ラムがあるが(クリチバ市の環境局の中村ひとしさんが貢献された)、ポルト・アレグレ市(以下PoAと略す)ではそれはない。
 PoA市では、ゴミの50%が有機物なので、コンポストを設置して分解して減量するのが、最終処分地(埋立場)の寿命をのばすためにも、よい。そのため の施設は昔からあるのだが、うまく機能してこなかった。よ うやく今1機が機能しているとのこと。この施設の拡充がゴミの減量化のための重要な課題だそうだ。
 最終処分場については、PoAから100kmほど離れたMinas do Leão村に民間のSil社が管理・運営している埋立処分場がある。
 ゴミ収集については、51台の普通収集車、25台の分別用収集車などがある。市内に13の分別工場があり、そこでは700人が雇用されて、毎日分別作業 をしている。ゴミを出す段階で、家庭で分別されているはずだが、完全ではないので、工場でも分別する。これ以外に、推計で約8000人の、インフォーマ ル・ セクターのゴミ収集人がいる。ポルトガル語で、catadores de ruaという。彼らは、分別した資源ゴミを市場でうって、換金して生計をたてているが、売れ残ったゴミはそのまま路上投棄する場合がおおく、市が十分に 管理できていないという。クリチバ市の住宅公社の建築家は、クリチバの例を念頭においてだが、catadoresの毎日の労働は奴隷労働のように厳しく、 問題だと、別の日に私に述べた。下の写真は市の環境局の建物。
SEMA_PoA

 以下、左は、町中の建物。右は停まったホテル(最上階の22Fの部屋だった)の窓からの風景。もっと立派で重厚な風景の場所があるが、写真をとるのを忘 れた。
portoalegre_city city_PA 

47 ポルト・アレグレ市のorcamento participativoの担当部局訪問(5月29日)
 ここは、時間がなく、あっさりと30分程度でおわった。plano diretor(都市計画マスタープラン)、conselho municipal(住民評議会)などの住民参加の方法や、plano plurianual(多年度計画)などと、「参加型予算」が衝突しないのか、訊ねたが、衝突しないとのことだった。下の写真は、orç amento participativoの部屋(市役所内)。
PoA_orcamentoP

48 ポルト・アレグレ市の郊外のシノス谷の靴の産業集積地(南米最大 の靴 の産地)を見学(5月27日)
 国道BR239沿いに、約60kmほどにわかって、たくさんの靴の工場が集積している。集積といっても、日本の東京都の大田 区や大阪府の東大阪地区のような密集した集積ではない。そういう集積をみなれた日本人には、分散しているとしか見えないが、ブラジルのスケールで考える と、集積といえよう。靴工場の南米最大の集積地で、とくに女性用の靴の生産で有名である。ここは、世界的に注目されている。シノス谷といっても、このよう に広く、1枚の写真におさまるような小さな谷ではない。「谷」の感じがわかるような写真は、撮れない。
 下の写真の左は、Parobé市にあるAzaleia社の工場。ブラジルの最大の製靴会社の1つで、運動靴から女性向けのファッション性 の高い靴まで、いろいろ作っている。基本的に国内市場向けだが、輸出もしている。本社は最近サンパウロ州へ移った。工場は2交替制(3交代制と書いていたのは、写し間違いでした)。ノルデステ地方へ工場 を移転させたので、労働者数はピーク時の3分の1程度だろうと思われると、もとアザレイア社のコンサルタントであったS氏が教えてくださった。
   右の写真は、Dois Irmaosという町で、ここにもたくさんの工場がある。ここは谷の感じがわかる。むこうの双子山がみえるが、そこから町の名前がきているらしい。ドイツ 人が多く、S氏はこの町で講演するときは、ドイツ語の通訳をつけるそうである。
 下の写真はどのあたりか忘れたが、シノス谷をひたすら走っている間にとった写真。少し谷の感じがわかるかもしれないが、いずれにせよ60kmの広い範囲 をさして「シノス谷」というようなので、部分的に谷のような写真をとっても、それでもってシノス谷の「谷」の感じを説明したことにはなるまい。
 【6月11日追記】基本的に女性靴の生産が多いが、それも当然で、男性は なかなか靴を買い換えないので、紳士靴を専門していると、商売が成り立たないのである。現在ブラジルは「クラスC」(AからEの5階層に分けたときの中間 クラス)の所得が伸びていて、消費者市場が拡大しているが、住宅、自動車、携帯電話、家具などが優先され、衣服とくに紳士靴は最後へと後回しになる。好況 の影響が靴産業とくに紳士靴のメーカーにプラスで出てくるまでには、かなりの時間がかかる。 
 azaleia doisirmaos viaduto