また、一部の個体は一見病的かと見られるような、これら朱斑紋点が鱗状に表皮組織が肥厚し、まるで イチゴ状に隆起する。(B型) 今後この表皮肥厚型については一応病理学的検査の必要があろうと考えているが、佐藤養魚場ではい まのところまったく無害で病的なものではないと判断されている。 この新突然変異型を発生した種苗のstrain 血統について、再び付言しておかねばならない。 私が1993年訪れたことがある、高知県高岡郡檮原(ゆずはら)町下西ノ川のアブラビレ研究所(故川上清 澄氏)が、岐阜県長良川由来のアマゴを25年間継代飼育した結果、1986年頃偶然アルビノが出現し、 やがてこの白化型発現頻度が高い、すなわち高変異率系統ができあがったが、当川上氏が不慮の交通事故 で他界されたため、この種苗を1999年より愛媛県西予市宇和町明間(あかんま)の佐藤養魚場(佐藤 正治氏)に譲渡されたのであった。このstrain を純粋的に佐藤氏は個人経営でありながら採算を度 外視し、人生の生甲斐というか男のロマンとして、その情熱をアマゴの新品種育成と改良に努めておられる。 その結果2003年頃には「モザイクアマゴ」またの名は「マダラアマゴ」の倍数体稀少種の作出に成功し、 その研究成果を宇和島水産高校の山木勝博士とともに水産学会誌や数々の機関紙等に発表された。 今回の変異型は2005年春稚魚選別中に佐藤氏が、その中でとくに目立つ美しい朱紅色の個体や、それと 表皮が凹凸をともなった個体を発見し育成されたものである。現在、下の写真のごとく全長30cm内外に成長している。 私の初印象はまるでベニザケ(ベニジャケ)かと見誤るぐらい斜上方から見ても赤く、また体色の地色の青灰色 や紺系のパーマークや小斑点、真白い腹底等の彩りがあいまって、鑑賞魚としてもまったく見ごたえある品種と思 えた。 前述のごとく、川上種苗由来のstrainを、その後佐藤氏が忠実に10年以上にわたって純粋継代養殖 された結果、独自の有遺伝子系となりこのような変異が出現したもので、もちろん飼育水としている観音水(日本名 水100選)の水質や、餌料にしている、あまご用配合飼料・固型NO4(オリエンタル酵母工業製)も若干関連 があるかもしれない。 以上のごとく、佐藤氏の卓越した養殖技術もさることながら、仕事に対する大いなる情熱と執念にはただ々 頭の下がる思いである。 2008・3・20本品種の撮影を快諾いただき、その際名前をお尋ねしたところ、未だ何も考えていないとのこと、 当日撮影に立ち会ってくださった山木勝博士と釣り本図書館管理人と私の3人でこの際、佐藤氏のお名前を冠して "サトウマス"と命名するのがベストであろうとなった次第である。 (過去に名を冠したのは、大島正満博士がアマゴとサクラマスの交雑種に平木氏鱒やイワナ属のミヤベイワナと 名付けた例が見られる。) 昨秋には、このサトウマスの雌雄から採卵、受精がなされ、現在その稚魚たちは体長5cm大までに成長しており、今夏 にはその成果が期待されている。 参考:当サイト前ページ「渓流魚・稀少種」 2008・3・25 吉安 克彦 記 |
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上:左側 下:右側 |
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上:四国 吉野水系大森川にて採捕'08・3・22 下:上の側面拡大写真 |
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上:頭部付近拡大 下:側腹拡大 |
下: ( B型 ) 頭頂付近拡大 |
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釣り本図書館 管理人の随行記 「サトウマス」は恵まれた環境と心優しい人たちに育てられていました。
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当主正治氏,吉安克彦氏 吉安氏夫人、山木勝博士 |
「女房釣る人、私写す人」 釣りの腕前は脱帽?吉安克彦氏談 |
今では弟子に昇格? 採算を考えず”いい仕事してますね” |
海抜315bの洞窟から湧水 水質は弱アルカリ(pH8.0)日量8,000トン |
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5cm、8gに成長しました もうすぐ自然界へデビューします |
200〜300尾飼育 用語解説はHP「丸太山魚」にあり |
飼育槽6、孵化槽2、 円形槽(親魚1,000尾と3倍体用)各1 |
800mの連山山脈に囲まれた盆地 隣の町へは必ずトンネルを通る |