日本周遊紀行

10日目:温泉と観光U(釧路湿原、釧網本線)   第11日目(白糠、音別・尺別、十勝地方)へ   写真集
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温泉と観光(24) 「釧路湿原」


写真:サテライト展望台より


釧路の市街地を横断して、湿原展望台へ向かう・・、

道道53(釧路鶴居弟子屈線)の湿原の際をしばらく行くと、高台に「展望館」があった。
夕刻迫る(16時15分〜)終了間際の時間帯であったが、有料入場360円を払って展望台へ駆け上がった。 
円形のほぼ360度方向の展望塔は全方向の眺望が得られるが、やはり夕闇迫る時刻、透明感のある視界は残念ながら望めなかった。 

しかし、我が国最大の釧路湿原の雄大さは堪能できた。
館内は釧路湿原の生い立ちや、湿原の動植物、遺跡、地形、地質などについて展示しており、展望台の周囲は遊歩道が敷かれ、 温根内ビジターセンターと北斗遺跡(旧石器時代から縄文・続縄文時代を経て擦文時代に至る重複遺跡)へ通じている。

釧路湿原は日本では最も広い湿原で、その凡そ八割はいわゆる低層湿原であると言われている。
湿原に踏み込んでみると地面はスポンジのように柔らかく、踏みしめると水がジュクジュクと染み出してくる。 
これが低層湿原と言われ現象で、寒冷な気候条件から植物が分解されないまま何百年にもわたり堆積し泥炭を形成している姿である。
普通なら腐ってしまう枯れ草も、寒冷地ではそのまま積もり重なってしまい、積もり具合は1年に1mm程度といわれ、釧路湿原の泥炭の層が平均3〜4m、深いところでは6mに達していることを思うと、最低でも3000年以上の歳月がかかっているという。

因みに、その下には貝の化石や海の泥などを含む層があり、その昔、海だったことを物語っている。
湿原の中には達古武湖、塘路湖及びシラルトロ湖などの海跡湖の他に数多くの小さな池や沼がある。 又、草原はヨシ、スゲに覆われた湿原が続いているが、わずかに変化を与えてくれるのは高層湿原でもあり、所々にハンノ木の樹海林のなだらかな丘陵や台地が広がっている。

釧路湿原は、低層湿原の他に高層、中間、それぞれに特徴的な植生も見られるという。 
湿原を潤している水は、釧路川と阿寒川から潤沢に供給され、これらの川の源である「屈斜路湖」と「阿寒湖」などが大きなダムの役割を果たしている。 
加えて、湿原の中にある各種の湖や沼も水の供給源となっている。
水源からの豊富な水の供給と泥炭がもつ保水力が湿原を継続的に維持するために不可欠の要素となっている。 
これら水性湿地には、特別天然記念物のタンチョウはじめ、わが国最大の淡水魚・イトウ、氷河期からの遺存種キタサンショウウオ、エゾカオジロトンボなど貴重な野生動物の生息地としても重要な地域でもあり、1980年に一部が「ラムサール条約」に登録されている。

【低層湿原】
一般に湿原と言うと、これを指し、釧路湿原の80%は低層湿原といわれる水性(湿性)湿原である。  
表面が平坦で地形面と地下水面とが一致し、湿原の表面まで冠水しているものを言う。
その水は地表水と地下水に依存し、比較的富栄養性で、そのため、大型のヨシ、ガマ、及び大型スゲ群落などの草木が繁殖する。
また、地下水で涵養されているため集水域が開発されると、その地下水位に変化がおこり、変質や減少、さらには消失してしまうことがある。

【中層湿原】
低層湿原から高層湿原に移行するときの湿原のことである。地下水で涵養され植生が維持されている低層湿原と、雨水のみによって植生が維持されている高層湿原との中間の性質を持つ湿原といわれる。植生はヨシやスゲ類が主体となり、指標となる植物はヌマガヤである。

【高層湿原】
分解されず堆積した泥炭が多量に蓄積されて、周囲よりも高くなったために地下水では涵養されず、雨水のみで維持されている貧栄養な湿原を指す、乾性湿原。 代表例に尾瀬ヶ原やサロベツ湿原があげられる。
植生はミズゴケ類が主体であり、温暖な地域では枯れた植生がすぐに分解されてしまうため、高層湿原は発達しない。
まれに冷たい湧き水などがある場合に、それに近いものが形成され、氷河期の遺存種など、貴重な動植物が生息する場合が多い。



釧網本線について・・、


釧路湿原は太平洋に面した海沿いを除き、釧路湿原展望地辺りを境にして、その周りを高い崖、高地でぐるっと取り囲まれて入るのが判る。 
この地が太古には海であり、海跡湖としての形骸が見て取れるのである。 
東の境界が鶴居村、屈斜路・摩周湖へ延びる道道53号線に沿って、西側はJR釧網本線辺りが境になっている。 
従って、JR線からは起点の東釧路(列車はすべて釧路発着)を出ると、列車はすぐに釧路湿原へと入っていくようになる。 
釧路の市街地から、いきなり広大な湿原の風景に変わるところがいかにも北海道らしく、茫々たる湿原に川がゆったりと蛇行し、大小の沼地が点在する風景は大陸的であると。

列車は全体的に湿原の東端を走るため、釧路から乗車した場合は、どちらか言うと車窓左側の方が景色がよい。しかし、一部は湿原の真ん中を走る区間もあり、湿原にある湖の中で最大の塘路湖(とうろこ)は、車窓右側にある。

尤も、この釧網本線は全国のすべての鉄道路線の中で、最も風景が美しい路線だといわれる。 
釧路湿原国立公園・阿寒国立公園の二つの国立公園、さらには網走国定公園の中を走るわけで、景色がよいのも当然である。
国立公園の中を走る路線は全国にいくつかあるが、二つの国立公園の中を走る路線は、全国でもこの「釧網本線」だけである。

次回はその「釧網本線」

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温泉と観光(25) 「釧網本線」」(追記)

「釧網本線」は、釧路から網走まで三つの国立・国定公園を貫く日本でも有数、北海道随一の好景観路線なのである。


湿原を走る「ノロッコ号」(資料)


終点・塘路駅に停車中の「ノロッコ号」

小生2008年初夏、札幌から然別温泉、釧路、川湯温泉、網走を巡った際、この釧網本線に乗車して釧路湿原の大自然を目の当たりにした。
序(ついで)ながらここで「釧網本線」(せんもうほんせん)沿線の観光案内をしてみよう。

【釧路発14:52(釧網本線ノロッコ4号)⇒塘路着15:50 塘路発16:19⇒川湯温泉着17:22】

釧網本線ノロッコ号は、釧路湿原観光専用列車で客車はオープン型、座席も外部展望がしやすいように設えてある。 
走行は普段の列車よりゆっくりで、特に主要地になると車内ガイドを聞きながらスピードも極端に遅くなり、写真撮影のタイミングも計ってくれる。
ただ、ノロッコ号は湿原の中心ともいえる「塘路」までである。
何しろ「釧網本線」は、釧路から網走まで、三つの国立・国定公園を貫く日本でも有数、北海道随一の好景観路線なのである。

「釧網本線」の釧路駅を出発した列車は、次の東釧路で根室本線と別れ釧路湿原を北上する。
湿原の中を走るようで、特に広大な日本一の湿原原を堪能するには左側車窓がよかろう。
「釧路湿原駅」という駅もあり湿原の中枢とも言えるところで、時間が許すなら途中下車して「細岡展望台」で釧路湿原の展望を満喫するのもよい。
又、「塘路駅」あたりでは「塘路湖」、「シラルトロ湖」の展望も絶佳である。

釧路湿原を北部へ進むに従い、「五十石」(ごじっこく)駅のあたりで湿原が果て標茶(しべちゃ)に着く。この標茶駅は嘗て国後島が望める根室標津までの「標津線」が走っていた、このことについては先に述べたが。 
湿原が果て、標茶から摩周にかけては牧場も多くなり、牛が草を食む風景が見られるようになる。「摩周駅」は阿寒国立公園の玄関口で、以前は「弟子屈」という駅名であった、「てしかが」と読むが、温泉地としても有名である。

元々は弟子屈温泉と呼ばれていたが、摩周湖への観光拠点であることを判りやすくするため、温泉地名に現在の呼称である摩周温泉が用いられて、1990年にはJR弟子屈駅も摩周駅と改称されている。 
この辺り、冬季の冷え込みは厳しく、摩周、川湯辺りでは空気中の水分が凍ってキラキラひかる「ダイヤモンドダスト現象」が見られる所でもある。

摩周から「緑駅」(みどり)にかけては、阿寒国立公園の中を走る。 
沿線にある川湯温泉は、北海道でも有数の規模の温泉であり、人気の「屈斜路湖」にも近いが、しかし駅は何故か無人駅でらしい。 
駅近くからは、硫黄の蒸気を噴出す硫黄山が不気味な姿をさらけ出しているところでもある。

川湯温泉から緑にかけては、釧路支庁と網走支庁の境界がある山越えの区間で、駅間距離も沿線最長の14.5kmあり、列車は湿原の開けた空間から鬱蒼とした森林の中を走ることになる。
次に、緑から知床斜里にかけては対照的に田園風景が広がる。

このあたりの田園風景は、本州以南のそれとは異なり、ジャガイモ、麦畑やビート畑などが広がり、いかにも「北海道の大地」といった感じである。 
車窓右側には、裾野が緩やかで頂上がとがった斜里岳が美しい山容を見せており、田園風景に彩りを添えている。 
その「知床斜里駅」は「世界遺産・知床」の玄関口でもある。

知床斜里を出ると、いよいよ車窓右側にオホーツク海が見えてくる。こちらは、やはり流氷が沿岸まで押し寄せる厳寒期が見ごろであろう、一面流氷に閉ざされる風景は、まさに幻想的であり圧倒的迫力で迫る・・。ただ、列車は海岸沿いの小高い丘陵の間を走る区間が多く、実際に海が見える区間は意外と少ないという。 

方、浜小清水から北浜にかけては、車窓左側に小清水原生花園が広がり、夏場は様々な花が咲き乱れる爽やかな風景が広がる。 
こちらには先に紹介した駅舎の洒落た「原生花園駅」という臨時駅もあり、季節ともなると停車駅となって多くの客が訪れるという。
まさに北海道の夏の優しさと冬の厳しさを、同時に味わえる路線である。 本線は、オホーツク海と濤沸湖に挟まれた細い砂州の間を進む。 

又、この区間は別名「グルメライン」と呼ばれており、止別・北浜・藻琴の各駅は、駅舎に食堂や喫茶店を併設しており、浜小清水駅には道の駅も併設されている。尚、「北浜駅」は、目の前がオホーツク海で、オホーツク海に最も近い駅として知られている。


終点の「網走」は、釧路と並ぶ道東観光の玄関口である・・、

市内にも、網走刑務所・モヨロ貝塚・天都山など見所については既に述べているとおりである。
まさに釧網本線は、日本中のどこを探しても、これだけ全線に亘って広大に広がる風景は、北海道でしか見ることができないであろう。
近年は沿線の豊富な観光資源を背景にして、トロッコ列車(ノロッコ号)やSL列車などの観光列車が通年運転され、又、団体臨時列車も多く、リゾート列車、お座敷列車が入線することもあるという。

特別事例として、2007年4月より藻琴駅〜浜小清水駅間において、「デュアル・モード・ビークル」といわれる車両が試験営業運転されているらしい。
往路は軌道、復路は道路を通る循環ルートで土日・祝日のみの運行を予定しているとか。

デュアル・モード・ビークル(DMV:Dual Mode Vehicle )とは、軌道と道路の両方を走れる構造を備えた車両(バス、軌陸車)であり、日本においては、利用の少ない路線のコストを削減するためにJR北海道などで開発を進めているという。

次回は、温泉と観光は、「登別温泉」    第11日目へ

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