2008年ブラジル滞在日記 その24  by Keiichi YAMAZAKI
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記 事71 クリチバ市の福祉システム
・クリチバ市の福祉システムを担う重要な機関が、FASでFundação Ação Socialという。その執行窓口ないし機構にあたるのが、CRASで、Centro de Referência da Assistência Socialという。今回は、FASのAlzenirさん(3266-8031、9977-5590)が最初に応対してくださった。そのあとCRASのほ うのJusaraさんが現場を案内してくださった。FASはムニシピオの制度である。
・クリチバ市には、行政区(AR:Adminisração Regional)は9つある。各区内にたくさんのbairroという地区がある。Cajuru区に私は住んでおり、今回訪問したFASもカジュル区の FASである。Cajuru区には3つのCRASがある。さらにNúcleoという窓口があり、そこにはすべてのSecretaria (局)の窓口が集約されている。
・2004年にPNAS(Programa Nacional de Assistência Social)がはじまり、2005年にSUAS(Sistema Único de Assistência Social)がはじまった。国レベルでの話である。その枠組みにしたがって、末端行政も再編されて、FASが整備された。したがって今回訪問した Cajuru区のFASも2005年にできたオフィスである。まだ新しいが、それ以前に何も支援制度がなかったというとそうではなく、福祉活動はあった。 今回SUASにあわせて再編されたということであろう。このカジュルのCRASには現在14人が市の職員として勤務している。8人が教育関係、4人が社会 福祉、1人が精神科医とのことであった。
・カジュル区の住民数は約220,000人である。
・Bolsa Famíliaは、国全体の制度であるが、実際にはムニシピオでおこなっており、いろいろな「局」がクロスして運営にかかわっている。ここ でいう局とは、Secretariaの直訳であるが、日本の「局」とはやや意味が異なろう。日本の地方自治体では、交通局、環境衛生局、下水道局といった 「局」があるが、「局」扱いになるのは、たいてい巨大な投資が求められる分野に限られる。地下鉄や下水道や下水処理場やゴミ焼却場などである。投資額がお おきいので、「一般会計(普通会計)」とは別の、「特別会計」で処理される。なぜ特別会計で処理されるかというと、理由の1つは料金収入がおおきく、「独 立採算制」の要素が少しまじっているからである。地下鉄の切符の売り上げや、下水道料金などである。「独立採算制」の是非については立ち入った論議がある ので、ここで展開するのはやめておく。「局」はいわば「現業」なので、専門の技術職員(バスの運転手や地下鉄管理の技師など)がかなりおられる。
 そうでない部局は、通常「課」で、福祉課や、最近では「するやる課」などがある。「課」は基本的に税金で維持され、料金収入はない。ブラジルでは、 「課」と「局」の区別がなく、すべてSecretariaである。お金がないから大規模な投資はできないので、そもそも「特別会計」(ブラジルでは「資本 会計」という)が皆無に等しいほど小さい。「課」と「局」に区分する必要がないのかもしれない。とくに、交通や下水道といった大規模投資が必要な分野は、 ほとんど州の事務(仕事)となっているので、ムニシピオ(基礎自治体、日本の市町村にあたる)は関係していない。たとえば、クリチバ市に下水道局はない。 パラナ州政府に、上下水道局があるが、それはSANEPALといって、公社になっている。
・現地訪問については、いかの通り:
 (1)職業訓練センター(料理、理容、パソコン、縫製)、材料費をのぞいて無料
 (2)青年教育センター 約180人が登録 ただし60人の子どもを含める
    学校に行かない子どもには、行くようにすすめているとのこと。
    参加は無料
    担当教師はすべて、Concursados(競争的選抜方式)で選抜された、契約職員である。
 (3)CATI: Centro de Atividades de Terceridades(高齢者活動センター)。70才以上が対象。
    活動の材料費をのぞいて無料。参加者は徒歩でこられるが、バスは高齢者なので無料。

【写真は、コミュニティの職業訓練センターの中の料理教室のようす】
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