幻のクニマス

最 近 の ニ ュ ー ス
西湖(山梨県富士河口湖町)でクニマス、70年ぶりに発見 2010・12・15
さか君(東京海洋大学客員准教授) お魚大使就任 クニマス発見に貢献 2011・2・21
中坊徹次京都大学教授 日本魚類学会英文誌(電子版)に論文発表 2011・2・22
本栖湖も調査 2011・3・中旬

「国鱒一匹、米一升」といわれ、秋田県田沢湖特産の幻のクニマスであった。
クニマスはサケ科に属し、ヒメマスの亜種とも考えられているが、産卵の最盛期が他のサケ・マス類と異なり冬である。
ことなど、特異な生態から独立の種との見方もある。
クニマスは1940年(S15)年水力発電のため国策として、田沢湖を貯水池として利用するため「玉川」の水が田沢湖に
導入されたことで絶滅した。玉川上流の玉川温泉(強酸性泉)が田沢湖に流れ込むようになったためである。
各地へ放流用に受精卵を送った記録があることに望みをかけて、田沢湖町観光協会が95〜98年、最高500万円の
懸賞金つきで「生き残り」を探したが見つからなかった。≪ポスターは「釣談魚談交遊録」に掲載≫
これまで標本が、18匹前後が知られていただけだった。
(注)標本数は定かでない。
京都大学総合博物館10匹
秋田県立博物館、田沢湖郷土資料館など県内5匹
米国シカゴ博物館1匹、サンフランシスコ博物館2匹

2004.4.24 朝日新聞
 幻の「国鱒」標本あった
2004.4.24 秋田さきがけ新聞
 クニマス京都への旅

★京都大総合博物館にあった標本9匹を秋田県水
 産振興センターが鑑定
★中坊教授によると、今回の標本はクモ学で知られ
 る、故岸田久吉博士が秋田県内の中学校の教師
 をしていた1915(T4)〜1918(T8) の間に採取し日
 本の淡水魚生物学の祖とされる、故川村多実ニ
 京大教授に贈ったとみられる。
★杉山英樹氏(秋田県水産振興センター内水面利
 用部長「クニマス百科」の著者)が9匹のうち届いた
 5匹をX線撮影し、2匹は卵を持つ雌であることも
 わかった。
★三浦久兵衛氏(田沢湖に生命を育む会相談役)も
 この標本を目にして10代の頃クニマス漁を手伝
 っていた、「生きていたときの姿に近く、網を上げ
 るとクニマスがキラキラ光った、当時の光景を思
 い出した。」
★川那部浩哉氏(滋賀県立琵琶湖博物館館長)は
 クニマスは、日本の淡水魚で絶滅したことがはっ
 きりしている3種類のうちの1つで謎が多い。分類
 や生態を調べるうえにはまとまった数の標本が絶
 対必要で、今回の9匹は大変貴重だ。
★9匹はエチルアルコールを満たした2本の標本瓶
 に分けて保存されている
★全長は小さいもので30cm、大きいもので34cm
 ラベルには「秋田県田沢湖町・岸田久吉寄」とあり
 氏が大館中学(現大館鳳鳴高校)に生物の教師と
 して赴任していた
★中坊教授によると、大正時代といえば日本の淡
 水生物の黎明期、川村教授hは研究のため日本
 各地から淡水生物を取寄せていた、その中にこ
 のクニマスもあったのではないか。
★米国にある標本も川村教授の手を経て海を渡った
 ものとみられる
★魚類学の世界的権威とされるデイビッド・スタア
  ・ジョルダン博士(米国)が日本の魚類を採集する
  ため、T11年に来日。採集の協力をした川村教
  授はクニマス3匹をはじめ日本各地から集めた淡
  水魚標本を博士に寄贈したと言う
★米国に戻った博士は1925(T14)、この標本を学会
  に新種として報告、川村教授にちなんでKamurae
  (カワムラエ)と名付けた                          
2004.8.19 秋田さきがけ新聞
 保存状態は”極上”仙台で標本2匹
2004.8.21 讀賣新聞
 幻のクニマス標本発見か、仙台の博物館

★クニマスとみられる標本が斉藤報恩会(理事長
 斎藤温次郎氏)
 自然史博物館(館長:西澤潤一氏)に保存されて
★いた
★杉山英樹氏によると「これほど魚体の色が鮮明
 に残っているのは珍しく貴重」
★標本は2匹で体長20.5cmと21.4cm
★収蔵リスト作成のため、標本を整理していて
 小林和貴氏(東北大・院・学生)が殆ど光の当た
 らない標本棚で見つけた
★標本瓶には「マス」とだけ記されていたがホルマ
 リン溶液中のラベルを確認したところ「陸封型マ
 ス」と書かれていた
★ラベルには、いずれも「昭和13年8月4日」魚類
 学者大島正満氏が田沢湖で採取、氏の直筆とみ
 られるクニマスの学名も記されていた
★同博物館は昭和8年設立の私設施設、東北地
 方の生物標本を網羅する活動に取り組んでおり
 クニマスもその一環で採取されたらしい
★山崎学芸員は「記録上はクニマスに間違いはな
 い今後は専門家の指導を仰いではっきりさせた
 い」と話している
★杉山部長は写真で確認したが、「精査しなけれ
 ば断定できないが
☆1匹は胸ビレが長く、ヒメマスに見られる黒点が
 ないなど、クニマスの可能性が高い
☆もう1匹は背に斑点のようなものが気になる
 いずれにしても保存状態が極めて素晴らし標本」
 と関心を示している
「クニマス百科」目次
編・著:杉山英樹 発行:秋田魁新報社 P239 
編集協力:田沢湖町観光協会 本体1,800円
T・クニマスに関する分類学的研究
U・クニマスの特徴
V・田沢湖の環境
W・田沢湖の漁業
X・ふ化・放流の取り組み
Y・クニマスと文化
Z・クニマスの滅亡
[・クニマス鑑定委員会

以下の画像は財団法人斉藤報恩会「自然史博物館」のご好意で掲載しています。
画像のコピー・転載は著作権の侵害となります。
 参 考 図 書
「クニマス百科」杉山英樹:秋田魁新報社:H12
「淡水魚あきた読本」杉山英樹:無明舎出版:1997
「日本学術協会報告」第16巻第2号S16
以下吉安克彦氏より情報入手
「応用動物事典」大島正満代表著者:北隆館:S36
「鱒釣り」目黒廣記:杉山書店:S10
「秋田郡邑魚譚」武藤鉄城:アチックミューゼアム:S15
「魚」大島正満:金子書店:S50
「淡水魚類総説」青柳兵司:淡水魚保護協会:1979
などなど
20.5cm
21.4cm
胸ビレが長い、クニマスの可能性が高い
背に斑点のようなものがある
左の画像と同じ標本

標本瓶には「クニマス」「田沢湖」の表示

昭和13年8月4日大島正満博士の自筆?
枠外左下M.O
こちらは当時の学芸員の筆跡と思われる


2004(H16)11・13(土)田沢湖へ
三浦氏よりクニマスの話を聞く
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2004・4・24朝日夕刊
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三浦久兵衛氏とご自宅で
懸賞廃止前のポスター

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