2007
(H19)年度、ポルトガル語外書講読の部屋
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2007年5月11日 記載
山崎圭一(横浜国立大学経済学部教授、ブラジル経済論)
今年度は、6名の受講生でスタートです。
さて、いきなりですが、翻訳ソフトについて考えたい。
昔は、おそらく、宿題のポルトガル語教材を翻訳ソフトなんかをつかって訳してきたら、
先生は叱ったことでしょう。いまでもそうかもしれない。授業の性格によっては、それ
正しい教授法だと思います。人に頼らず、自分で辞書を引き引き、訳していく。しかし
この外書講読では、従来のやり方を変えて、それをOKにしたい。というよりも、これか
らの時代、ビジネスマンも公務員もNPOの活動家/経営者も、自動翻訳ソフトをいか
につかいこなすかが、重要だと思う。翻訳ソフトの使い方を教えることも、重要かと
思います。
実は、自動翻訳ソフトを完全に使いこなすには、高度な外国語の能力が必要なの
です。ラクをしたつもりで、そうではない。なぜなら、翻訳ソフトは、不完全な訳出
しかできない。今後10年たっても、おそらく完成度は若干上昇するだろうが、決して
完全な翻訳は実現しないと思います―私は言語学者ではないので、素人の発想
だということで、聞いてください―。なぜ、完全な翻訳ソフトは無理だと、私が考える
とかというと、以下の例文をみていただきたい。
バブル崩壊でどん底に突き落とされた日本経済だが、ようやく回復の
明るいきざしが2003年頃からみえはじめたように思う。しかし格差社会
ということがマスコミですごく言われるようになって、好況を実感している
人が少ないという説もある。(作文:山崎圭一)
É economia japonesa empurrada por uma bolha estourou pelo fundo,
mas
pensa como pode ter começado a ver um sinal luminoso de recuperação
finalmente de aproximadamente 2003.Porém, uma coisa como sociedade
de diferença é comunicação de massa; isso chega a ser dito, e há
extremamente
poucos pessoas que percebem condições prósperas; há uma opinião,
também.
It is Japanese economy pushed by a bubble burst by the bottom, but
thinks
as can have begun to finally see a bright sign of recovery from
about 2003.
However, a thing such as difference society is mass communication;
that come
to be said, and there are extremely few people realizing prosperous
conditions;
there is an opinion, too
いずれも、次の無料翻訳サイトで、試したものです。
http://translation.infoseek.co.jp/
これはすばらしいサイトで、このサイトには、私は感謝しているのですが、ポルトガル
語訳も英語訳も、完成度は高くはないわけです。ほかのどのような優良ソフトを
つかっても、やはり高いレベルには行かない。
たとえばLago Vista X PROという、8万円くらいのソフトがあります。それで一度
上記の日本語を英訳してみましょう。
It thinks as finally light きざし of the recovery began that きざし could
be
involved for 2003 years opportunity though it is the Japanese
economy pushed
down in the depths by the bubble burst. But, it comes to tell the
thing of the
gap society terribly with the mass media, and there is an opinion
that the
person who realizes prosperous conditions is rare, too.
「きざし」がわからなかったようです。まあそういうのは、学習機能が付属してい
るので、そのつど学習されれば、解決する問題です。しかし全体としては、
完成度は無料ソフトと似たり寄ったりです。
結局自分でやるしかない。ちょっとやってみましょう。下手な訳ですが、それでも
機械翻訳よりはましです。
It seems to me that the Japanese economy finally began to show a
bright sign
of recovery around 2003
after going through a highly stagnant period that
started in 1991 when the
bubbule economy burst. But analysts argue that
only a limited number of
people are having a good time while mass madia
are paying an increasing
attention to the issue of "gap-widening society".
プロならもっとしゃれた訳をするでしょう。これは、下訳、下書きで、ここから
時間をかけて、ブラシュ・アップしていくわけですが、まあとりあえずこれと機械
翻訳を比べると、こっちのほうが通じる。「どん底につきおとされた」「好況を
実感する」「マスメディアですごく言われるようになる」といった表現は、
すべて意訳しました。
「どん底につきおとされた」→highly stagnant period
「好況を実感する」→having a good time
「マスメディアですごく言われるようになる」→pay an increasing attention
これらを直訳している限り、わかりやすい日本語にはならない。しかし、機械に
それができるとは、思えないのです。
むかし研究社から出ている『時事英語研究』の英和翻訳セミナー(笹井常三
先生のご担当)で、次のような課題文がありました(課題記事はもっと長いが、その
一部分に次のような文章があったという意味)。
彼はその過程で重要な役割を演じたことで、広く知られている。
その訳として、以下が紹介されてました。参加者(読者の投稿者)の訳だったか
笹井先生の訳だったか、忘れてしまいました。ちょっと細部は違ったと
思いますが、だいたいの内容ということで、書きます。
He is widely credited with
having played an eminent role in that process.
とにかく、こういう発想は絶対に人間にしかできない。原文のどこをみても、widelyも、
creditedも、ない。「広く知られている」が、どう発想すれば、widely creditedになる
のか。すごい訳だと感服したことを、二十年近くたった今でも鮮烈に覚えています。
私が思いつく訳なんて、ベタな訳です。せいぜい:
He is well known as a person
who played an important role in the process.
とか
Many people recognize him as
a key person who played an important role
in the process. ぐらいなもんです。素人訳ですね。上と比べると、月と
スッポンです。この名訳だけで特許をとってもいいじゃないかと言いたくなる
ほどです。特許はまずいかな。そうすると、使えなくなりますものね。名訳は、
公共財かもしれません。ただ著作権もあろうし、厳密には、ここで『時事英語研究』の
何年何月号かを示さずに、紹介するのはまずいかもしれません。20年くらい前の
号です。現物が、自宅の引っ越しの混乱で、ちょっと見あたらない。すみません。
ペルーの国立サンマルコス大学の経済学部のアジア経済論、日本経済論
の気鋭のエコノミスト、カルロス・アキノ先生って、日本語会話の達人だと、
私は思うのです。あるとき、食事のときに、ビールをお勧めした。
彼は、一言:「え?あ、じゃあ今日は、乾杯だけで。すみません」
びびりました。普通なら、「ちょっとおなか大きいし、じゃあ、コップに半分だけ」
とか、「じゃあ、ちょっとだけ」 という程度でしょう。
かりに、原文で、Give me a little とか、Let me drink a littleとか
I will drink a littleとかいうのがあったとして、それを「じゃあ、乾杯だけで」と
機械が訳せるでしょうか。人間にしかできない。
このように、翻訳ソフトの限界をふまえた上で、ビジネスで使いこなすには、どうすれ
ばよいか。その使いこなしかたを研究することが、重要だと思うのです。やはり、
使った方がよい。忙しいので、翻訳に凝っている時間はない。質よりも、とにかく
なんでもよいから訳をすることのほうが重要な場合もある。最低限通じる訳に
して、出せばよい。出版用の文章にはなかなか使えない。しかし、使い道は
あるはずです。
それに、プロに頼んだマニュアルの(手作りの)翻訳でも、完ぺきとは行かない。
最後は自分でチェックする必要がある。その意味では、人間の翻訳も、機械翻訳も
同じです。
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最後に、ポルトガル語に翻訳するための、会社やサイトを、紹介します。
ちなみに、京都外国語大学住田育法先生のサイトも、情報充実です。
http://www.kufs.ac.jp/Brazil/03docentes/sumida/link.lp.html
以下、Yahooの検索で出てきたサイトです。
(1)適訳社
http://www.tekiyaku.net/japan/service/language/brazil/index.html
(2)クロスインデックス社
http://www.crossindex.jp/language/portuguese/
(3)ポルトガル語専門グローバルエージェンシー
http://www.globalagency.jp/translation/languages/portuguese.html
(4)アーキ・ヴォイス翻訳WEB
http://www.translate.co.jp/lang/portuguese/index.html
(5)ポルトガル語翻訳屋
http://www.honyakuya.jp/portugueseindex.html
(6)日本語→ポルトガル語ダイレクトの翻訳ソフト!
http://www.ifour.co.jp/product/douji_pt/
(7)もう1つ、日本語ポルトガル語ダイレクトのソフト!
http://www.crosslanguage.co.jp/products/hworld/pt/
ダウンロード販売してるようです。6000円弱。
(8)ネット上の、無料翻訳サイト。これも日本語→ポルトガル語ダイレクト!
http://translation.infoseek.co.jp/?ac=Text&lng=pt
(9)これは、英語経由のソフトです。
http://www.asciisolutions.com/products/pika1/?PPC=o&gr=pika1&kw=portugal_honyaku
終わり。