著者は気鋭のブラジル研究者で、横浜国立大学経済学部教授。 ”高校生向けの経済学入門本”として書いたというが、本書は市場万能主義の是非や途上国経済への取り組みという現代の経済学 の課題と、具体的なブラジル経 済の変化を、産業立地のサンパウロやリオデジャネイロへの集中の度合いの減少、製靴と自動車産業を例にしての工場の地方移 転、セアラ州の零細・中小企業に 見る「内発的発展」の可能性、”大きな政府”でも”小さな政府”でもない”良い政府”を作る一手段としての住民「参加型予 算」のポルトアレグレでの試行な どの実例を詳述しながら、問題点をよく整理して分かり易く解説している。 高 校生や大学新入生のみならず、ビジネスマンでももう一度経済学という見地からブラジル経済を通じて幅広く開発経済学を理解する上 で格好の概説書であるが、 芯には副題の示すように、新自由主義経済万能論への批判的な見方が論理的に示されている。コラム、経済学の用語やキーワードのミ ニ解説、ラテンアメリカや アジア、南アフリカ等の筆者の訪れた土地の風景素描など、様々 な工夫が凝らされ、読みや すい。 〔桜井 敏浩〕 <>〔『ラテンアメリカ時 報』 2006年夏号掲載 (社)ラテン・アメリカ協会発行〕 注:以上は、掲載誌を発行している(社)ラテン・アメリカ協会のWebサイトに収録されている (http://www.latin-america.jp/)。 た だし掲載ページに入るには、会員ユーザー名とパスワードが必要である。学生会員の場合、年会費が2000円とリーズ ナブルなので、学生諸君に入会を勧めま す。学者や第一線のビジネスマンによって書かれた、ラテンアメリカの経済、政治、社会、歴史、文化、音楽などを知る 上で有用な情報を得ることができます し、人的ネットワークも広げられます。なお、ブラジルで管理運営されている日本語でのブラジルビジネス情報サイト、 「ビズポイント」内の、櫻井氏の書籍紹 介コーナーにも、上記紹介文が転載されているので、今回はそこからコピーさせていただきました (http://www.bizpoint.com.br/jp/reports/sakurai/sk15_01.htm)。 |