現代日本語の口語表現について考える―山崎ゼミで
途上国経済を研究する留学生のための―
- communicative Japanese for daily communication on
economics
※横浜国立大学経済学部山崎圭一 2004年4月10日立ち上げ
横国大山崎ゼミナールのメイン
ページに戻る
以下の内容をPDFファイルで読む ここをクリック
以下の内容を一太郎ファイルで読む ここをクリック
私は日本語教育の専門家ではないので強くお勧めはしないが、日本人のネイティブがよく使う日常会話の表現
(expressions)があります。決して下品ではないし、口語すぎる(too
colloquial)というわけではない。以下の表現は、みなさんが日常会話に使っても、相手に対して失礼になるということはないと思います。ただしな
かには、日本語として美しい表現かどうかという点からみると、お勧めできない表現も含まれているかも知れません。
論文で使用できる表現ではありません。あくまで日常会話のための表現です。
1:「ねえ、花子さん、最近、横浜西口近辺でどこかおいしい店、開拓した?」
この「開拓」は、日本人のネイティブしか使えないのでは。「みつけた」は使えても。
2:「そんな方法で練習しても、永遠にサッ
カーは上達しないよ。」
この「永遠」、留学生はなかなか使えない。せいぜい「いつまでたっても」や「なかなか」や「絶対に」くらい。誇張表現ですが、日常会話ではよく使いま
す。ただし私は、これがあまり良い表現だとは思いません。
3:「この前の論文、名刺代わりに、○○
先生に渡しておいたほうがよいよ。」
「名刺代わりに」とは、ちょっと挨拶のつもりで、ということかな。
このニュアンスも説明するのは難しい。
4:太郎君:「夕飯(は)、どこへ行こうか?」
次郎君:「方
針(を)、まず決めようよ。」
留学生は、「方針」というと、政府の経済政策の方針や会社の経営方針などをまず思い浮かべるでしょう。日本人って、実は日常的によく使うのです―この
「方針」という言葉。ちょっとしたことでも、「方針をまず決めて」、となる。「和をもって尊しとなす」日本社会における、同意形成の知恵なのかも知れな
い…。ちなみに、「は」「を」は入れないほうが、家族や友人の間では、よりナチュラルな会話とある。大阪ではもっと縮めて、「夕めし、どこ行こ?」「方
針、さき決めよ」となる。ちなみに、「いこか」とワープロで入力しても、「行こか」とは出てこない。ワープロの世界は「標準語帝国主義」で、残念だ!
5:太郎君「彼は、すぐ切れる。瞬間湯沸かし器だね」
この「切れる」というのは、short-temperedという意味で、すぐに腹を立てたり、大声で怒りを表したりすることを意味します。こういう人の
ことを、「瞬間湯沸かし器」というわけです。すぐ「沸騰する」からです。ある人が大変怒っている場合に、「彼の頭から湯気が出ている」という表現も使いま
す。
6:「彼は切れる人
だ」「彼はすご
く切れる人だ」
上とよく似ているが、意味がまったく異なります。これは、有能なという意味です。判断が速くて的確である、頭の回転が速い、分析力がある、など、意味の
範囲はかなり広いと思われます。「すごく切れる」と、「すぐ切れる」は、「ご」の有無の1字違いですが、意味がまったく異なるので、気をつけましょう。
7:太郎君「○○教授は、最近新しい本を書いておられないのかなあ。次郎君、
ちょっと気をつけて、見つけたら教えてください」
次郎君「わかった。アンテナを張っておくよ」
これは、注意して情報収集に努めるという意味です。
8:新戦略での販売網は、点から線に、線から面に、
拡大していかねばならない。
これも、現代日本人がよく好んで使う表現です。
9:ビールを勧められて、あまり飲めない人がいう一言
太郎君「次郎君、久しぶりだね。まあ、ぐいっと1杯、行きましょう」
次郎君「じゃあ、乾杯だけ…
今日は胃の調子がよくないものだから」
10:太郎「期末試験どうだった?」
次郎「山をはっていた領域が一問も出題されてなくて、知らないテーマの設問ばかりのだったから、目が点になった」。
非常に驚き、またあわてることを意味します。パニックに近い状況の際に使います。
11:太郎「例の頼み事、やってくれた?」
次郎「ごめん、今週はちょっとバタバタしていて、時
間がなかった」
忙しいということを、「バタバタする」という。
小説などを読みながら、こういう言葉にアンテナを張り、メモにして溜めていくと、会話力がアップするのではないか
(Taking notes of this kind of expressions while reading through
paperbacks will give your spoken Japanese a chance of great
improvement, I bet. )。