山崎圭一の論説とエッセイのページ
(立ち上げ:2003年2月25日 火曜日)
(最新の更新:平成21年12月14日
月曜日)
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まじめな論考から、気楽な随想(オープン・ダイアリーのような内容の書き
物を含めて)まで、いろいろ
掲載いたします。市民や企業人からのメールでの問い合わせ(ラテンアメリカの経済現象についての
質問を含む)への回答も、 適宜掲載するつもりです(質問そのものを送り手に無断で掲載することは
いたしません) 。
1 経済学関係の論説編(HPにアップしたのが新しい順に並んでいます)
−個性は、伸ばすものか、生かす(活かす)ものか?2009年12月記す ここをクリック
−
indignationについて PDFファイル
(平成21年1月19日 アップ)
− ミルトン・フリードマンの逝去についての『日本経済新聞社』の社
説(2006年11月18日号)
を批判する PDFファイル
−「ブラジル財政・地方財政の課題
と展望(上)(下)」(『ラテン・アメリカ時報』2003年
7月号
および8月号 所収) 日本ラテン・アメリカ協会が発行している会員向け月刊誌に掲載された論文で、
同協会編集部の許可を得て転載した。内容は同一だが、画像的にコピーしたもの
ではないので、 段落書式やページ数は異なることに注意されたい。
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リック PDFファイルはこちらをク
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−「メキシコ・シティの都市整備と環境政策」(『ラテン・アメリカ時報』2001年6月号
に
所収) 日本ラテン・アメリカ協会が発行している会員向け月刊誌に掲載された論文で、
同協会編集部の許可を得て転載した。内容は同一だが、画像的にコピーしたもの
ではないので、 段落書式やページ数は異なることに注意されたい。
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PDFファイルはこちらをクリック
一太郎ファイルはこちらをクリック
−「『レアル』経済下におけるブラジル財政フェデラリズムの変容」(『ラテン・アメリカ論集』
第33号(1999年度発行)、ラテンアメリカ政経学会誌 所収)
ここをクリック(ラテンア
メリカ政経学会のホームページの学会論集ダウンロード
サービスからPDFファイルでダウンロードしてください)
ラテンアメリカ政経学会のホームページは、こちら
−「『平和を考える集い』が開かれました」(
『組合ニュース』2002 年度第9 号、 2003 年6月11 日、
横浜国立大学教職員組合執行委員会発行 に所収)
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リック、PDFファイルはこちらをクリック 一太郎
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−「メキシコ・シティの都市・環境・福祉」(『地理月報』No.
463、2001年6月20日、二宮書店発行に
所収) Wordはこちらをクリック、
JPG画像ファイルはこちらをク
リック 一太郎ファイルはこちらをクリック
(本ホームページへの掲載については、二宮書店の許可を2003年7月2日に得ております)
−「熱帯地域の環境政策入門」→『環境と公害』(岩波書店発行、第30巻第1号、
2000年夏号)
に掲載された論文 「≪環境問題セミナー≫ 熱帯地域の環境政策入門」を、出版社の許可を得て
ビズ・ポイントのサイトに転載した。
http://www.bizpoint.com.br/jp/reports/yamaz/00817.htm
ビズポイントへは、こちらをクリック
−「ブラジルの開発と地方自治体」(ブラジルのサンパウロで運営されているビジネ
ス・サイト
ビズポイントに掲載されている論考)→http://www.bizpoint.com.br/jp/reports/yamaz/00412.htm
ビズポイントへは、こちらをクリック
− 「アルゼンチン危機とペルー、ブラジル」(ブラ
ジルのサンパウロで運営されているビジネス・サイト
ビズポイントに掲載されている論考)→ http://www.bizpoint.com.br/jp/reports/yamaz/0203.htm
ビズポイントへは、こちらをクリック
2 随想(どうでもよいような無駄口)
2-1 NEW! 私の、メディア論のま
ねごと(TVや新聞の批判)
3 新刊書紹介コーナー
経済学、社会科学関係 紹介の最新号(2003年12月29日アップロード) こちらを
クリック
経済学関係の新刊書紹介(古い号) こちらをクリック
経済学以外の一般書 こちらをク
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4 メールでのお問い合わせへの回答
(1)チリのFTAをどうみればよろしいか?
日本の大手電機メーカーに勤務し海外経済情勢の分析を担当している
方からの問い合わせ(横国出身者)
回答1:
結論から述べると、チリのFTAの問題を私は詳しく論じることができません。今のところ、専門はブラジル財政・地方財政で、ようやくペルー財政も手を伸
ばし、またメキシコの都市政策もかじり始めました。ラテンアメリカ研究は、みんなでいろいろ分業しています(地域、分野の両面で)。チリに詳しいのは、重
鎮といってよいですが、細野昭雄先生(つくば大副学長をへて神戸大学教授、そ
の後中米の駐エルサルバドル日本国大使 [2005年11月19二日追加字句])です。細野先生は経済統合論も深く関心を寄せておられま
す。同教授がお書きになった論考を探してみてはいかがですか。
私が言えるのは、経済統合論は応用問題で、その前にまず基本として、その国のマクロ経済状況の予測がどうなっているかのメモをつくる必要があるというこ
とです。他人の作った予測を写すのではなく、自分の頭で考えたメモをつくらないと、分析には役立ちません。チリについては私は作っていませんが、最近ペ
ルーについては、ある民間のシンクタンクから依頼されて、簡単な予測表を作成しました。今年の財政赤字、経常収支と資本収支、物価上昇率(下落率)、経済
成長率、対外債務、金利、為替レートなどが、それぞれどのように動くかを、できるだけ予想値を挙げて、予想してみましょう。たとえば、私は2003年度に
ついては、ペルーは経済成長率3.5%以上を達成するだろうと、考えています(根拠は省略)。こうした基礎的な検討の上で、経済統合がどのようなインパク
トを及ぼすかを考えてみるという、そういう順序を踏むのがよろしいかと存じます。
さてFTAAについては、ブラジルもかかわりますので、少し考えなければいけないのですが、ごくおおざっぱに述べると、「ロー・ロード」の製品について
は、米国は市場開放するのではないでしょうか?だからラテンアメリカの輸出は伸びるでしょうけど、「ハイ・ロード」製品は逆に途上国側に米国製品がはいっ
てくるので、ラテンアメリカ側にとっては厳しい仕組みではないかと思います。農産物はどうか……ブラジルの濃縮オレンジなどはフロリダから米国に大量に輸
出されていますが、あれなど、どうなるか。業界ごとにわけて、シムレーションが必要ですね。今時間がないので、あとで、またメールします。
回答2: FTA(Free Trade
Agreement)は2002年時点で世界に143つあると言われています。私自身が数えたわけではありませんが、名古屋大学の平川均教授が、先日横国
の学内で開催されたある研究会でのご講演で、そのように紹介されていました。その情報元はと言えば、JETROの石川幸一氏が丁寧に数えて表にまとめてお
られるようです(『JETROガイドブック』)。世界地図をかいて、統合地域を線で囲んでいくと、ごちゃごちゃになってスパゲッティを入れたボウルによう
に見えることから、「スパゲッティ・ボウル」と言われていることは、ご存知だと思います。先般貴君も参加されたIDBの経済統合に関するセミナー
(2003年2月に富国生命ビルで開催)でも、この言葉は使用されていました。なぜこれだけ増えているのか。WTO交渉が、多国間交渉なので利害が錯綜し
て複雑化してしまい、進捗しないということに、FTAブームの原因の一端があります。そこで数ヶ国がまとまってFTAを先に結んでしまおうというわけで
す。段階としては、いくつかに区分できますが、(1)関税率の削減→
(2)関税の撤廃(モノの移動の自由化)→ (3)「生産要素」の移動の自由化(資本と労働の自由化)−−「土地」は当然移動不可能−− →(4)制度
(税制や為替制度など)の統一化 → (5)通貨統合、という流れかと思います。さて、それで誰が得するかというと、煎じ詰めば、拡大した統一市場の中の
「強者」ですから、ある国のある業界が強ければ、FTA内の他国の同業界はつぶれます。この産業の不均等発展は「空間的」にも反映されまして、域内の地域
間格差は大きくなります。活況を呈する都市と構造不況に悩む地域・都市とに、都市システムは二極化する可能性があります。
アジアでは、ASEAN+3(日本、中国、韓国)で1つの経済圏を作ろうという発想がありますが、これが米国主導のAPECと整合しない面があって、米
国がなかなか作らせてくれないという問題があります。「強い米国」を牽制する意味で、アジアでAPECとは異なる独自の通商レジームをつくることは賛成で
す。その場合、ASEANはまとまっているから、あとは「日本+中国+韓国」が北東アジアでどうまとまるかです。残念ながら今はバラバラで、しかも日本は
戦争責任や補償をあいまいにしたまま過ごしてきた。早くにこういう問題は処理して、次の枠組みつくりに向かえばよいのにと私は思います。中韓日のFTA構
想どころか、いまだに靖国神社公式参拝といった不協和音を日本がすすんで作り出していますから、先見の明の欠如ここに極まれりです。いずれにせよ、FTA
域内は経済ルールが統一される可能性が高く、そのルールをできるだけ米国流にしておきたいという意図を米国は有しているので、「APEC」を軸にせよと彼
らはアジアに圧力をかけてきます。FTAとは、経済問題というより、統一ルールをめぐる政治問題(とりわけ米国との対抗関係が基軸)だと私は思います。
さてラテンアメリカに話を戻しますが、世界に143もFTAがあるのに、ラテンアメリカは9つしかありません。この地域はFTAが少ないのです。WTO
の硬直化云々以前から、古くから経済統合の枠組みづくりがすすんできたという点に特徴があります。こうした中、3つ論点を設定したいと思います。
第1は、個別のFTAの検討ですが、これもやはり米国のFTAA構想との政治的対立問題が底流にあると思います。これは経済学というよりは、ほとんど政
治学に近い研究になるでしょう。
第2は、チリの動きです。チリは99年にシンガポールと結びました。チリと韓国のFTAが今年発効し、そしてチリは日本ともFTAを交渉中です。チリは
このようにアジアとの関係強化を模索しています。2003年2月14日に総理官邸でにラゴス大統領・小泉首相間の日智首脳会談が開催されたのですが、日本
側はチリとのFTA締結交渉は現時点では慎重のようです。このアジア・南米の結びつきをどうみるかです。この動きはAPEC絡みですから、その点ではチリ
は米国の利害に逆らわないという立場で動いていると考えられます。FTAA、APEC、チリの個別の動きの以上の3つの流れは、私は同じ線上にあるとみて
いますが、いずれにせよこのテーマは専門ではないので、あまり確かなことを申しあげることはできません。
第3はFTAAそのもの経済的性格です。これは広義の「ドラライゼーション」論と関係します。ドラライゼーションには5つの意味があります。(1)ハイ
パーインフレ下でのインフレ・ヘッジとしての、ポートフォリオのドル資産へのシフト (2)ブラジルのレアル政策やアルゼンチンのカレンシーボード制のよ
うなドル・ペッグ制 (3)変動為替制度下での(つまり2番目とは反対の為替レジーム下での)ドル預金の増加(ペルーやボリビア) (4)完全なドル化=
自国通貨の放棄(パナマやエクアドル) (5)ドルを共通通貨とする通貨統合、以上です。1番目が政治学に近い研究だとすれば、これは経済学寄りの研究で
す。
いずれにせよ、FTAの経済的メリットの算出は、計算困難な課題だと思います。各方面とも、きわめて政治的な動機で動いており、経済計算をして行動して
いるわけではないと、私は考えています。しかしこの問題で実証論文を書いたわけではないので、以上はあくまで私なりの「考え方」の提示に過ぎません。
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山崎
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