国連グローバル・コンパクト ジャパン・ネットワーク
「出前授業」
2009年10月15日実施
対象は、山崎ゼミナール(学部)と、大学院修士(一般)および博士(国際開発専攻)の院生
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はじめに
2009年10月15日の木曜日は、国連グローバル・コンパクトのジャパン・
ネットワーク(GC-JN)の方々がこられて、「出前講義」をしてくださった。大変ありがたかった。富士ゼロックスさん(GC-JNの事務局を人材面で支
援)、武田薬品さん(GC-JNの幹事会社)、ニコンさん、中日本高速道路、アミタ社さん(活動評価担当)の5社がきてくださった。CSR活動に、がん
ばっておられる。私は経営学の専門家ではないし、ましてやCSRの専門家でもないが、素人の印象としては、これらの企業のCSR活動は、大変進んでいると
感じた。大学もがんばらないと、周回遅れどころの遅れではない(むろん横国大の環境レポートの作成に関わっている同僚・仲間を批判しているわけではな
い)。4社の努力に敬服した。ボランティア精神にあふれた社員の方々。個人の資質だけでなく、会社として、法人として、CSR活動をバックアップしようと
いう強
い意志をもっておられるように感じた。その意志に共鳴して、従業員・社員が、巨大組織を内部から変えようと、努力されている。巨大な組織をかえるのは、大
変である。しかしそれに果敢に挑戦されているのである。
写真は、当日の様子(会場:国際経済法学研究棟3F会議室)
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教えていただいたこと
時間がないので、今回学んだことがらで、もっとも印象に残った点のみ数点、ま
とめておきたい:
(1)中日本高速道路:
同社も、たくさんの環境活動を展開されている。私もよく高速道
路をつかうが、小さな工夫、大きな工夫がたくさんあることを知って、楽しい内容のご講義であった。道路の夜間照明が樹木へ光害をあたえることをふせぐため
に、照射範囲を絞り込む技術を組み込んだ照明施設が整備されていることなど、知らなかったが、興味深いことであった。また大量の剪定ゴミがでるそうであ
る。たしかにそうであろう。ドライバーの居眠り運転防止の目的もあるのだと思うが、心地よい緑が道路周辺に整備されている。その植物を管理しているわけ
で、大量
の剪定作業がある。その切り取られた植物・枝類はほとんどすべてがリサイクルされているそうである。これも、知らないことであった。
(2)ニコン社:
同社の報告は、主に、社内へCSR意識をいかに浸透させるかについて
の考察
であった。同社は多大な努力をはらって、社内への徹底をはかっておられるようで、その社員教育プログラムに感銘を受けた。労働環境の改善がまだまだ課題だ
と、多くの社員が認識していることが、社内調査から判明しているそうである。ちなみに、残業や長時間労働は、横国大でも改善がむずかしい問題である。日本
のあらゆる
組織に共通する大きな課題といえよう。いずれにせよ、こうしたCSR浸透活動を、リーマン・ショック後の世界的危機の最中で展開されていることに、感銘を
受けた。
(3)富士ゼロックス:
GC-JNの事務局として、国連GCについてのわかりや
すい概説をしてくださった。知識を更新した。全世界で約7000社が加盟しているが、脱退(CSR努力後退による資格喪失を含む)もあるようで、この数値
は、多少は増減するそうだ。それは、知らないことであった。国連GCは、人権、労働、環境、反腐敗の4領域からなり、10の原則がある。
(4)総合的に:
「本業」そのものをどう改善していくか。本業と、CSR活動が
別離していては駄目で、本業そのものを社会的に責任のある内容にかえていかなければならないと、述べておられた。国連GC本部も、加盟企業をみる際に、そ
の点に注意しているようである。たとえば大学であれば、本業は、なんといっても授業そのものであろう。その授業で一言も環境配慮をしないで、別途学内でリ
サイクルをして、CSR報告書にその成果をかいていても、不十分なのかもしれない。本業そのものに環境を盛り込んでいかないといけないのであろう。授業
で、もっと環境を語るとか、授業のレジメの枚数を減らして、紙資源を節約するとか、そういう「本業そのものをかえていく」ことが、今、求められている。本
業は従来通りで放置して、別途CSRをやっていますというのでは、不十分なのであろう。その点を、CSR先進企業の事例から、学ばせていただいた。
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私の一般的コメント
さて、拝聴した側としては、「すばらしい」に尽きる。しかし、そのコメントだ
けでは、大学での授業の「反応」としては、不足かもしれない。せっかく「大学」という場にきてくださったので、それなりの「コメント」をフィードバックし
ないといけないのかもしれない。
それは、聴講した学生の義務であろう。
学生・院生に発言を期待したが、当日はかなり静かであった。教員が発言してい
ては、学生教育にならないのだが、静かな学生さんを刺激する意味で、コメントをさせていただいた。学生に奮発していただくという意味で、無理をして、私は
あえて「かなり元気な」ふりをした。あえてmilitantな質問者役を演じてみせた。昨今、学生はおとなしい。先日も、ある日系ブラジル人の実業家(建
設関係の社長さん)と話していた。彼は、「日本の学生はおとなしすぎる」と、心配しておられた(注)。
注:むろん、学生をしかってばかりでは駄目で、励ましや、見本をみせることが、重要である。教育ビジネスは、(1)励まし(ほめること)、(2)教師自ら
お手本をみせること、(3)叱咤する、の組み合わせで成立するビジネスであろう。横国経済学部の学生は、よくできるので、ほめてよいと思う。とはいえ学生
への叱咤も必要であろう。
以下はこの4社を具体的に念頭においてのコメントではない。あ
くまで一般論と
してのコメントである。
(1)薬品会社:
繰り返すが特定企業のことではなく、一般論であるが、CSR報
告書は、医師との癒着をふせた、「きれい事」になっているのではないか。製薬会社の「プロッパーさん」や「学術さん」と医師の間の
「多様な関係」について、私はある程度の情報を得ている。たしかに近年、
製薬会社の誠実性・清廉性は抜群に向上してきたように思われる。とはいえ、まだまだ「伝統的関係」が温存されているようにも思われる。医師側にも、多大な
問題があるように感じる。それを世間が100も承知であることも、事実である。
(2)高速道路会社:
「高速道路をつかうをやめましょう。自動車にのるのを減ら
しましょう」ぐらいのことを言わないと、本当にエコロジカルなマインドがあるとはいえないのではないか。これもあくまで道路関係会社一般についてのコメン
トで、特定企業は念頭においていない。企業のミクロの視点だけでなく、消費者のミクロの視点が必要ではないか。つまり消費者個人が、自分の交通モードの組
み合わせ、仮にこれを「交通モード・ポートフォリオ」(TMP: Travel Modes
Portfolio)と呼ぶとすると、地理的移動のの自由と効用を十分に享受することを前提にしたうえで、そのTMPをエコロジカルに最適化する必要があ
る。その結果、A地点からB地点へ行く際の選択として、高速道路利用が減ることは、ありえる。これは、マクロで考えても、環境的に最適行動でありえる。こ
のような、自社商品についてのネガティブな宣伝をすることを、「売上抑制型宣伝」(SCPR: Sales-Curbing
PR)と呼ぶとすると、実際にSCPRの例はたくさんある。たばこ(JT)、アコムといった消費者金融、爆笑問題が起用されている転職会社、などでは、売
り上げを減らしかねないメッセ-ジをCMで流している。ちなみに、「高いよ」で知られる「雪国もやし」は、「1%戦略」「深堀戦略」などといわれる、特定
グループへターゲティングする形のマーケティング手法であって、SCPRの例ではない。
(3)メーカー一般について
軍需産業との関係がないのか。たとえば神
奈川県では、港があるので、造船をまだ少しやっている。たとえばIHI Marine
Unitedという会社は、豪華客船パシフィックビーナスを製造した会社であるが、ヘリコプター搭載護衛艦「ひゅうが」も製造している(http://www.ihi.co.jp/ihimu/)。
軍需産業が悪い
と断定するつもりはなく、国防は大事で、軍備は公共財の1種であるが、一部に危険な武器があり、行きすぎた軍事技術の開発があるように思われる。東芝、日
立製
作所、三菱重工業など、軍需産業の一角を占める有名企業は多い。軍事のことは、どこまでがCSR報告書に含まれるのであろうか。
(4)労働について:
日本では昨今、「派遣切り」が目立っている。先日『プレ
ジデント』誌を読んでいたら、記事の本文の中で、段ボール製造大手の(株)レンゴーの社長さんが、「派遣切り」が顕著なキャノン社の御手洗氏を実名で批判
されていた。国連GCの10項目には「派遣切り」の言葉はないが、日本だけでなく、労働契約の柔軟化は世界中で進んだ。国連GCは、労働については(第3
項から第6項)、児童労働の禁止や強制労働の禁止など、やや途上国偏重の規定にみえなくもない。児童労働が少ない先進国の事情を念頭にいれると、「派遣労
働依存」のような「労働契約の柔軟化」と「格差拡大」の問題が、むしろより重要で、本来明文化されて挿入されていても、おかしくない。むろん、解釈のしか
たによっては、現行の国連GCもこの問題を含んでいる。この点を含めたCSRレポートつくりも、すでに求められつつあるのであろう。
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まとめ
今後、「ネガティブ情報」をどれだけCSR報告書などで開示していけるかが、
1つのポイントなのであろう。たとえば自動車製造会社であれば、その会社の自動車の交通事故による死者が、その年何人であったかを、テレビのCMやCSR
報告書などで、開示してはどうか(これは以前、ブラジルのある自動車メーカーの現地社長に直接申し上げた)。年間数千人が交通事故で亡くなるし、排ガスに
よる大気汚染で小児ぜんそくが大都市で増えている。自動車はいまだに欠陥商品ともいえるわけで、それを綺麗な「イメージCM」で売り続けようとするメー
カーのセンスのなさ、感覚の鈍さが、問われている。ただ消費者の目もこえていて、偽善はすでに見抜かれている。CMの効果を高める上で、また顧客獲得上、
「sincerity」が今後の重要因子として浮上する。
いずれにせよ、以上は先をみてのコメントである。当面は、とにかくCSRをぼ
ちぼちでも進めることが大事である。その意味で、今回の4社の取組みは、(素人判断だが)優等生のようであり、たいへん参考になって、ありがたかった。
司会の方が、<企業ではたらくビジネスマンは、会社人間であると同時に、消費者でもあり、家庭を守る人でもあり、市民でもあり、ときにNGOに参加する
人でもある。1人の人間がいろいろな面をもっている>というような趣旨のことを、おっしゃっていた(文言は必ずしもこのとおりでにあらず)。これはなるほ
どそうだと、感じた。社員の多面的な感性を引き出して、経営資源・
経営情報として活用していけば、会社や組織がさらに発展できるであろう。最近、「ワーク・ライフ・バランス」という言葉をよくみかけるが、ワーク(仕事)
かライフ(生活)かの2元論ではなく、人間はもっと多面的だ。CSR活動を通じて会社の経済行動が社会的観点から最適化されるということは、最後は、人が
よりよく、よりバランスよく、より普通に(まともに、常識をもって)行動するということに帰着すると思われる。つまり、人の日々の行動が、最後は組織の行
動になって現れ
る。常識ある行動が何かは、簡単な問題ではないけれども。
講義は、いずれもパワポが充実していた。さらに会社概要・
資料・報告者など、配布
物も十分にあり、ありがたいことであった。内容はいうまでもなく、「外見的にも」充実した講義であった。アミタさんを含め、5社に感謝申し上げる。
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