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アンプが故障した時に
まず初めにお読みください
やるべき事と、やってはいけない事
アンプが故障したり、調子が悪くて困っている皆さん。世間一般では、とにかく何かしなければ落ち着かない風潮で、電気の知識が無い人まで、あれやこれと無駄な事をしてしまうようです。
それだけなら良いのですが、この何となくやってしまった事が、さらに大きな被害を起こしている事も多いのです。
このような無駄な被害を減らすために、修理屋の経験から分かってきた事をお知らせします。
やるべき事
1、次にあげる事態の時
これは、もうアンプをあれこれいじらずに、速やかに修理を依頼するべきです。
速やかに電源を切り、二度と電源を入れてはいけません。見ていても原因などわかりません。損害を大きくするだけです。
電源が入らない
ヒューズが切れた
音が出ない
煙が出た
変な臭いがする
異常に熱くなる
触ると感電する
2、音が出るが、おかしい時
音が汚い、ノイズが多い、音が途切れる、音が異様に小さい、スイッチ切り替えが効かない等の時は
問題を具体的に紙に書いてください。そうする事で問題が整理され説明しやすくなります。それが常時起きるのか、時々なのか、何時からなのか、何かをしたらそうなったのか、等なんでも書いてください。これが修理をする人には参考になります。
もっとも、この症状は修理の参考にはなりますが、修理の見積もりにはなりません。 見積もりはあくまで現物を見て検査して、初めて現実になります。その見積もりをする時にも、上記のような故障の説明は非常に有用な参考になります。
3、ジャックに接触不良がある時
多くの場合に、接点復活剤を使いたくなりますが、絶対にアンプのジャック孔には吹き込まないでください。理由は次の項で説明します。
以下の方法は、本当は教えたくないのですが、アンプをだめにしてしまう事があまりにも多いので、特別に教えます。
ジャックが接点不良になった時、接点の洗浄には綿棒を使います。100円ショップの綿棒は太すぎで、ジャックの接点を痛める恐れがあります。値段は高いですが、薬局で赤ちゃん用の細いのを買ってください。これに接点復活剤を少量しみこませて、接点を拭きます。拭く前に、ジャックの孔をよく覗いて、接点がどこにあるのか確認します。
これが分からない人は止めてください。
ジャックを壊す恐れがあります。接点復活剤の分量は少しで十分です。多すぎると、次項で説明するように大きな問題になります。
これでも、接触不良が改善されない時は、ジャックを交換するしかありません。やけになって接点復活剤をじゃぶじゃぶ使ってもだめです。
以上の作業は、貴方自身の責任で行ってください。作業の結果、何が起きても、私は責任を負えません。
4、ボリウム(ポット)にガリが有るとき
アンプの外側からできる事は何もありません。
アンプ修理のできない人、電気工作をできない人は自分でアンプを分解してはいけません。また、接点復活剤をやたらに使う事は新たな問題を発生させるので、お勧めしません。
また、最近のポットは1回ガリが発生すると、接点復活剤では治らない例が多いです。部品を交換するしか道はありません。
このような訳で、ポットのガリは、修理へ出した方が良いです。
やってはいけない事
1、×真空管を交換する
2、×ヒューズを交換する
3、×接点復活剤をノズルで吹く
4、×アンプを分解する
これを見てびっくりされる方もいるでしょうが、素人の方はやってはいけません。
以下に説明します。
1、なぜ真空管の交換をしてはいけないのか
真空管は値段が高いものです。大量生産のロシア管でもマッチドペアで出力管を揃えるとけっこうなお値段になります。高級品になれば数万円もかかります。しかし、こんなに値段が高くても、使い方が悪ければ一瞬で壊れてしまいます。
真空管の寿命は本当は長いのですが、それは正しく使った時の話です。間違った使い方をすればすぐにお爺さんになってしまいます。(真空管は男か?)ひどい場合は死んでしまいます。
素人が交換した時にはバイアスが無調整になります。バイアスが極端に異常な時にはショート状態になり高熱を発するので、真空管の周りの部品を巻き添えにします。最悪時には高価なトランス類が壊れます。このような事故は実際にあるのです。
この様な事故を防止するには、真空管を正しく使うしかありません。どんな時にでも、です。特にアンプが故障した時は、アンプは普通では無い異常な事態になっています。この時、真空管が正しく動作する保証はありません。
真空管を交換するという事は、この様な故障時でも安全に交換できる知識と技術が必要なのです。
私の店へ、お客様が真空管を交換したという故障品のアンプが多く来ます。それらの多くは運良く無事ですが、でも満足な動作はしていません。バイアスがずれて歪みが増加したり、出力が出なかったり、異常に発熱して熱くなったりしています。
しかし、現実にはさらに不幸なアンプも有ります。新品だった出力管の文字が熱で煤けたり、ベースのプラスチックが熱で変形変色したりして劣化して、もう新品では無い事があります。さらには出力管の周りが燃えたり、トランスが断線したり大被害になるものもあります。
最近では、楽器屋さんでお手軽に真空管が買えてしまいます。しかしその反面、良心的とも言える輸入アンプ販売元のサービスでは、絶対に真空管のみの販売はしていません。素人の取り扱いでは、真空管の品質は保証できないのと、大きな故障の原因となるからです。真空管は修理技術とセットであるのです。
2、なぜヒューズを交換してはいけないか
ヒューズは、異常な事態の時に、電流を遮断する安全装置です。ですから、故障が修理されないうちに、ヒューズを交換して電源を入れてはいけないのです。
現在ではギターアンプに使われているヒューズは、スローブローと呼ばれるタイプです。このスローブローは一般には売っていません。秋葉原でも売っている店は限られています。一般に多く売られているガラス管ヒューズは、ファーストブローと呼ばれるタイプで、スローブローの代わりには使えません。ですから、ホームセンターなどで売っているヒューズはアンプには使えません。PSEマークが書いてあってもだめです。
そして、アンプの話
アンプのヒューズが切れた時、アンプ内部では何かの異常が起きています。これを修理しない時には、ヒューズを交換しても、また切れます。
アンプ内部の異常が深刻な時は、再び電源を入れるのは非常に危険です。再び電源を入れた事で中が燃えた、という例も多くあります。勿論、アンプを外から見ていたのでは、これは分かりません。だからこそ、慎重になるのです。
ところが無謀にも、ヒューズが切れなければ良いだろうと、以前よりも大きな電流値のヒューズに交換する人もいます。この場合、アンプが本当に故障していたら、被害は甚大です。ヒューズが切れないまま、内部が燃え続ける事もあります。
まあ、現実にはけっこうな人がヒューズを交換して、その結果、無事にアンプを使っている事もあります。
その様な事もありますが、結果がどちらになるのかは、ギャンブルです。勝ちが有れば、必ず負けもあります。
ギャンブルもしたいが、でも負けたくない人は、ヒューズの交換は1回だけにとどめる事です。しかも同じ形式同じ電流値のヒューズを使わなくてはなりません。それから、結果がどうなろうと私は責任を取りません。自分の責任でやってください。
1回ヒューズを取り替えて、それでだめな時は、あっさりと修理へ依頼する方が良いです。1回でだめなものが、2回目に良くなる事は絶対にありません。
3、なぜ接点復活剤はノズルで吹いてはいけないか
接点復活剤は便利なものです。私も頻繁に使います。しかし、この便利なものは副作用も有ります。
接点復活剤は電気を流れやすくしますが、その他に物体の摩擦を弱めて滑りを良くします。このことは、スイッチやボリウムに良いのですが、他のものに付着すると問題になります。電気を通りやすくするのは絶縁抵抗を下げます。滑りを良くするのは、ネジを緩めます。
ですから、接点復活剤を使うときは、必要な部分だけに塗布するように、その他の不必要な部分には付着しないように作業します。
素人の皆さんは、接点復活剤の缶のノズルで吹いてしまいます。すると、どうしても周り中にまき散らす結果となります。
一番いけないのは、ジャックが接点不良だからと、ジャックの孔からノズルを入れて吹き込む事です。これをやるとジャックの近所は接点復活剤でびしょ濡れになり、アンプのシャシの中へは霧状になったものが侵入します。そして、シャシ内部のあらゆる所へ付着します。高電圧部分やネジ類にも、もれなく付着します。その結果は数ヶ月後に現れます。高電圧がリークするノイズが発生して、全てのネジが緩みます。こうなると、シャシ全体にこびり付いた接点復活剤は完全には落とせなくなります。
あるアンプでは、全部の真空管ソケットのピンの孔が接点復活剤でびしょ濡れになっていました。これが原因で、このアンプは高域発振を起こしていました。
あるアンプでは、高電圧部がある基板を固定する8本のネジのうち、2本は無くなり、残りの6本は全部ゆるんでいました。このアンプはシャシ全体が接点復活剤で、湿気を帯びたように表面が濡れてツルツルしています。
私たち修理屋は、接点復活剤を使いますが、やたらにノズルで吹いたりはしません。やり方は色々ありますが、できるだけ周囲に付着しないようにやります。また、やむを得ず付着してしまった時は、きれいにふき取ります。また必要があれば、アンプから部品を取り外してから接点復活剤を使用しています。
この話のように過激に接点復活剤を使われたアンプの修理は、苦労します。結果的に修理コストは高くなります。可能なかぎり接点復活剤を洗浄、ふき取りしなくてはなりません。それをやっておかないと、故障はいつまでも続きます。
4、なぜアンプを分解してはいけないか
感電の恐れがあります。
アンプを壊してしまう恐れがあります。
貴方が怪我をする恐れがあります。
この三つが主な理由です。
どうしても、やりたい人は以下を読んでください。
いけないと言われると、やりたくなる人へ
私自身も、DIYは好きで(実は貧乏なので)家の水道を直したり、ペンキを塗ったりします。ですから自分でアンプを何とかしたいという皆さんの気持ちは良くわかります。
ですが、素人の技術というのはリスクを伴います。今年の夏も、エアコンの配管工事を自分でやりましたが、見事にガスが抜けて、業者に助けてもらいました。
しかし、全ての責任は自分自身で受け止めなくてはいけません。この場合、損をしても、怪我をしても自分が悪いのです。
自分の作業の結果、どんな結果が出ても、真空管屋さんや部品屋さんのせいにしてはいけません。もし、そんな事をすれば、技術の世界では嫌われるだけです。自分の能力が無い事を反省する事が大事です。
電子部品には性能の限界もあるし、正しい使い方もあります。それをコントロールする力は自分で学習するしかありません。本による知識も必要だし、実技で失敗したら考える事も必要です。でも感電だけはしてはいけませんが。
危険から、どのようにして自分を守るかも大事な技術です。昔の人は大小色々な失敗を起こしながら実技をこなしてきましたが、それはまあ良いことではないでしょう。やはり事前に学習し、準備し、それから作業をするべきです。
結論として、
アンプを修理したいのであれば、まじめに電子工作を学習しましょう。今すぐ達人と同じになれる訳ではないですが、初歩から始めるのも楽しいです。
幸いな事に、現在ではアンプに関する良い参考書が多く出版されています。諸先輩の技術を、本を読むだけで得られる、こんな楽な学習はありません。是非活用するべきです。
まじめな学習には、多くの時間とお金も掛かります。でも、アンプを修理したいのであれば、他に道はありません。長い長い根気が必要ですが、必ず成果は上がるようになるでしょう。
しかし、生半可な気持ちでアンプをいじるのであれば、それは無駄であるし、危険な行為です。じたばたするのは止めて、アンプは修理に出す方がずっとお得です。

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