■そろばん名人 井脇ノブ子氏
記者手帳
「コンピューターより速くて便利」。井脇ノブ子衆院議員(60)は、少しでも暇があれば、議員会館にもどってパチパチとそろばんをはじく。始めたのは小学四年生の時。出稼ぎから帰った大好きな兄が新品のそろばんを持ち帰ったが、自分への土産ではなかった。その時はショックを受けたが、後に近所のある家から厚意でもらったそろばんを、今でも愛用している。▼「絶対に日本一になる」と誓い、独学で一日六時間の猛練習を重ね、高校時代に検定六段を取得した。今も毎日の練習と丹念な手入れは欠かさない。「どこに行くときも忘れない。墓場まで持っていく覚悟だ」。ここまで覚悟があるのは、そろばんが自分の道を開いてくれた、という思いがあるためだ。▼授業料はおろか生活費にも困っていた高校・大学時代に「井脇そろばん塾」を開いた。高校の授業料は月千五百円だったが、塾で生徒一人五百円の月謝を受け取って何とか乗り切った。後に学校を経営するようになったが、予算や決算などは必ずそろばんをはじいて計算した。国会議員となった今「そろばんで国家予算の計算や分析に挑戦したい」と意気込む。
日本経済新聞 2006年10月26日夕刊より